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IRSの脱税ターゲットは暗号資産?

直近のアメリカのインフレ率は7.5%と発表された。長期金利も上昇、株式市場だけではなく債券市場も下げている。ではお金はどこに流れているのか、どうも商品相場が上昇しているのと関係があるようだ。ただ、このインフレを起こしているのは大企業自身ではないかとWall Street Journalの社説は言っている。大企業のCEOの発言を見ると、原材料、人件費の高騰だとは言っているが、一方でインフレはウエルカムだとも、助けになるとも言っている。通常価格を上げれば他の企業が価格を下げて商品参入する競争の構図が見られるのだが、アメリカ市場では大企業が市場の75%を占める寡占市場となっており、インフレ率以上に価格を上げる事で大企業が儲かる構図となっていて、大企業の利益率は益々上昇するという事だ。
さて、Forbes誌に先日 IRSが Voluntary Disclosure Practice Preclearance Request and Application を改正したと書いていた。これは税法に抵触し潜在的に刑罰となる可能性がある納税者が、自発的に開示することで救済を受けるプログラムに参加する前段階で参加資格があるかどうかを判断する為のガイドラインである。少しややこしいが、救済を受けるにはIRSから税務調査を受ける前に自発的に過去の間違いや不作為を開示する必要があり、IRSに納得してもらう必要がある。今回の改正により所得税だけではなく相続税、贈与税に至るまでペナルティのガイドラインが明確化、公表された。また今回の改正では暗号資産にかかわる規定がかなり増えており、もし救済を受けたい場合にはかなりの情報を前もってIRSに提供する必要がある。そこには、暗号資産だけではなく、暗号資産の元手や移転のデータを曖昧にするMixerとかTumblerのサービスを利用した場合にはそのサービス会社名、さらにどうしてそのようなサービスを利用したかも開示しなければならない。但し、もしこの暗号資産の原資が不法なものであれば、当然のことことだが、このプログラムは利用出来ない。
2016年にハッカーが暗号資産の交換所Bitfinex社から当時7000万ドル(70億円)が盗まれる事件が起きたが、最近このハッカーが逮捕された。30代前半の若いカップルだが、この暗号資産が今では26億ドル(3000億円)にまでなっているという。他の暗号資産脱税事件もそうだが、盛んにMixer、Tumblerなるサービスを利用しており、IRSのターゲットとなっている。但し、今の所、NFT(Non-Fungible Token非代替性トークン)についてはまだ言及されていない。今後もIRSは暗号資産脱税者とそれを助けるサービス会社の取締りに力を入れる事は間違いない。これはまるでIRSが海外資産脱税者からそれを手助けしたプライベートバンク、弁護士、会計士、コンサルタントを一網打尽にし,次々に刑務所に送り込んだ時のことを思い出す。日本も悪質脱税者にはそれくらいのことをしないとデジタル社会での租税回避行為には対抗できないのではないか。

☆ 推薦図書。
小川孔輔著 「青いりんごの物語」 PHP研究所 1900円+税
この本は㈱ロック・フィールドの企業史である。編集長から頂いた。それと日本発の惣菜ビジネスを起業した岩田弘三氏の伝記本でもある。例によってこの手の本の特徴がにじみ出るが、冒頭に安藤忠雄氏が登場し、この会社の工場などを氏が設計し、「青いりんご」のレプリカが本社においてある。それは有名なサムエル・ウルマンの「青春」で、青春とは人生のある期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ、70であっても求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味があるうちは青春で、失望とともに老い朽ちる。安藤忠雄氏が青いりんごに込めたメッセージは、赤いりんごではなく、熟していない、いつまでも未熟で青いりんごでいてほしいという願いが込められている。安藤氏の人を引く付ける話し方もそうだが、氏と接している人々の何と成功者が多いかと、この本を読んで改めて考えさせられる。

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