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アメリカ人の慈善活動(偽善活動)の話題

私は今ロサンゼルスからの帰途JAL069便の機内で書いている。講演を終えて直ぐ搭乗した。今回のブログは、日付変更線を超えたので火曜日となる。

 

まず寄附行為とは、反対給付を伴わないのが前提である。つまりこれをあげるから、何々をして頂戴は取引であり寄附行為ではない。アメリカの資産家は慈善事業に熱心ということだが、熱心の理由の一つは節税である。日本と違い全額寄付金控除がある。今回取り上げるのは、シティグループのCEO兼会長でもあったSandy Weill氏の妻であるJoan Weillから、NY州にあるPaul Smith’s College(名門校である)に20百万ドルの寄附を行いたいと申し出があった。但し、寄附の前提として、学校の名前をJoan Weill – Paul Smith’s Collegeと変更してくれと条件を付けてきた。つまりNaming Rightsを要求してきたのである。

 

この大学はNY州の山間の人里離れた場所にあり、林業やホスピタリティに特化しているが、規模が大きくなく資金繰りも豊かでなかった。Joan Weillはこの大学の理事を長年務めてきており、彼女は過去にも何度も寄附を行い、もし彼女の名前が学校の名前になるのであれば今後寄附も集まりやすくなるだろうということで、学長も密かに同意しその大学名を変更することを、ついに卒業生に発表した。

 

ところが卒業生から大反対、結果、訴訟問題にまで発展した。そもそもこの大学は、カナダ・米国の国境近くの起伏の多い場所に位置し、1850年代にロッジを開き、Teddy Rooseveltや Calvin Coolidgeらがゲストとして滞在したこともある。この大学は1940年代にSmith Familyが大学の為に土地を寄附したことから始まったことに由来する。このような伝統を背景に、卒業生が寄附との交換条件として名前を変更することに激怒した。多くの卒業生は寄附の代わりに大学名を変更するのはおかしい、寄附の代償を求めるというのはおかしいと言っている。至極当然であろう。

 

この反対運動はソーシャルメディアで加熱し、特にWeill氏夫妻は米国では有名なこともあり、益々米国全国規模で議論が過熱していく。ある学者によれば、寄附の代わりに大学名の変更を行うというのは超富裕層の間でも聞いたことがなく、新しいトレンドであると言っている。アメリカでは、最近、匿名での寄附というのは殆どなく、彼らの名前なしでの寄附に満足しなくなってきているのが現状のようだ。

 

最近多くの大学、慈善団体、公共施設ではNaming Rightsを一つの資産と考えているようだ。昨年9月、New York Avery Fisher Hall at Lincoln Centerの名前がDavid Geffen Hallと変った。これはDavid Geffenが1億ドル(120億円)の寄附を行ったからである。ただ、このようなことが大学等の学校に起こると、野球場やスポーツスタジアムのように大学名がころころ変わるのが心配だとしている。日本は文部科学省の手厚い保護の下に財政破たんの問題は学校では起きないが、財政難の今日、学校の補助金をアメリカ並に減らして、甲子園常連校やサッカー、ラグビー、バレーボールなどに勤しんでいる学校に有名企業の名を冠した校名が付くというのも一つの考えではなかろうか。

 

元に戻ってPaul Smith’s Collegeの騒動だが、州の裁判所により、校名変更は大学を創立した際のスミス氏のオリジナルの遺書及び寄附にある条件に抵触するとの判決が出た。大学は卒業生からの益々大きくなる反対運動に直面し、長い裁判になることを恐れ、控訴を断念。結果、大学名の変更は出来なくなり、Weillファミリーも20百万ドルの寄附を取りやめた。この裁判はアメリカにおける資本主義の慈善活動の有様が浮き彫りになるようなケースであった。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
池谷敏郎著 『人は血管から老化する』 青春出版社 1,000円+税
不調や病気は年のせいというより「血管のせい」である。体は全体まんべんなく同時に衰え始めるのではなく、全身の細胞に酸素や栄養素を運んでくれる血管が老化してしまうと、それが全身に及ぶのだ。自分の血管がどういう状態かは普段分からない。もたれたり痛んだりしないからだ。つまり自覚症状がないから。この著では、血管は何歳からでも修復できるという。それには正しいケアをしなければならない。食、運動、生活習慣が大事で、コンビニ弁当、酒、塩、チョコ、たばこをはじめ、今現れている症状がどういう病気なのかを具体的に書いている。

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