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税務調査先をAIで選別、国税庁

コロナウイルスの影響で個人の確定申告の期限が1か月延びた。有史以来初めてである。あの3月11日の震災でも延びなかった。よほど政府もうろたえざるを得なかった、未知の分野だ。

話は変わるが、日本で一番過密な東京都渋谷区。東京都は法人数も多いことから、各区に複数の税務署を配置している。ところが渋谷区はただ一つ、渋谷税務署だけである。

問題は渋谷区に所在する企業数である。企業に対する税務調査は、その会社の本店所在地で行われる。渋谷区に本店を置いている会社は何と5万社を超える。これに対して渋谷税務署の法人担当者は120名程度である。税務署員1人あたりの法人数は400社余りとなる計算である。

税務調査は通常複数人で行われるので、1年間に行われるのは1人あたり20社程度になる。2人で40社が限度である。そうすると5万社のうち1年間で税務調査を受けるのは2000社程度となる。4万8000社は税務調査の対象外となる。ほとんどの会社は税務調査を受けなくて済む。そうしたことから、首都圏では渋谷区に本店を置く会社がドンドン増えてきたのである。しかも税務調査先を選定するのはベテランの職員の「勘」。これは刑事の犯人検挙も一緒だろう。

国税庁はこのような従来からの慣習を打ち破る挙に出た。調査先の選定はベテラン職員に頼るのではなく、来年から「AI」が選定するのだと。画期的である。国税庁によると、損益計算書、貸借対照表はもとより、企業の経営内容を説明する経営者の音声データを分析し、脱税などの疑いがある会社を絞り込むとしている。

AIの学習は、まず実際にあった脱税の手口を学習する。さらに財務書類を分析し、業績に絡む記述のなかで過去の脱税事案で多用された文言などがないかチェックする。また経営陣の音声データや経営トップの写真、メッセージも分析する。上場会社のオーナー経営者の分析では、リスクを好んだり自己陶酔型の説明をしたりする経営者ほど監査法人に高い報酬を支払って癒着し、不正に手を染めているケースが多いという。こうしたAIの分析結果に基づいて、内部情報などを加味して税務調査先を決定するとう。

現在でも、税務調査を行う際は、必ず経営者のブログやフェイスブックなどを万遍に調べ上げてから行うようになった。こうしたことからの教訓では、経営者はできるだけ自分に関わる情報を世間に出さないことである。国税庁は絶えず納税者の情報を欲しがっているのである。

☆ 推薦図書 ☆
稲盛和夫、梅原猛著 『完本・哲学への回帰』 PHP研究所 1850円
梅原猛氏は昨年逝去された。私は大好きな哲学者であるが94歳という年齢であったので、そこまで良く生きてくれた感があった。この本は生前の対論書の3冊「哲学への回帰」「新しい哲学を語る」「人類を救う哲学」を集大成したものである。私は稲盛氏よりも梅原氏の本に興味があった。
いみじくもコロナウイルス問題が発生した今こそ、この哲学が必要であろう。梅原氏はウソをつかないことが最低のモラルという。ソクラテスは哲学者の嚆矢と呼べる人だが、その前にはソフィストという雄弁家がいて、白を黒と場面によって言い換えるものであった。ソクラテスは対話によってそれを暴露し圧倒した。道徳というのは「ウソをつかない」ということ。
アイヌ人はウソをつかない。なぜだというと、自分たちには霊がついている。霊はそのウソを知っているから、ウソをつかない。ウソをついても仕方がないというわけである。ウソをつかなければならない時は「知らない」という。しかし最近はそういう精神が失われてきている。ニーチェはドイツ語で「レードリッヒカイト」といっているが、ウソをつかないという意味だ。
氏は京都の人から「梅原は良くやっているけど、本当の事を言いすぎる」そう言われて「やはり京都人にはなれない」と、京都大学で長年過ごしたものの「私は生まれが仙台で、本当のことを言いすぎる」というくだりは、笑えた。
この本も京都のPHP研究所の編集長から頂いたものである。

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