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看板ニュースキャスター解任とアメリカ訴訟 、そして税金問題

日本では全く報道されなかったが、アメリカではビッグニュース、この月曜日、大人気の保守派、Fox News 視聴率No.1キャスターのTucker Carlson氏 が突如クビになった。先週の金曜日の彼の番組ではSee you next Mondayと言っていたのだが。またリベラル派のCNN のDon Lemon氏も突如クビになった。超保守と超リベラルの両キャスターが電撃解任されたのだが、その原因というと、虚偽の情報の拡大や女性蔑視、人種偏見的なコメントが問題となったようである。
その中でもCarlson氏の突如解雇は、投票機を製造したDominion社がFox Newsに対し、16億ドル(2500億円)の損害賠償訴訟で、彼のデポジションでの証言が公になったことが原因のようである。トランプは、2020年の大統領選がDominion社の投票機がバイデンに有利に出るように製造され、不正に選挙が行われた主張した。Sidney Powellや元NY市長の Rudy Giulianiを弁護士として雇い、州及び連邦レベルで 訴訟が行われたが、不正はないとして全て却下された。ところがFox Newsはこの問題を大々的に取り上げ、あたかもDominion社による不正が行われたかのように報道したのである。ところが、この訴訟で蓋を開けてみると、これらのキャスターもFox Newsの上層部も Murdoch氏も含め、トランプによる不正主張には懐疑的であったことが判明した。
2020年11月には Carlson自身もプロデューサーに対し、Sidney Powellは嘘をついている、とか、この不正主張は、信じられないほど不快だ、視聴者はよい人たちだ、彼らはこのような嘘を信じてしまう、と問題視している。他のキャスターMaria BartiromoもPowell は気が狂っている、信用出来ない、と述べ別のキャスターLaura Ingramも、Sidney Powellは少しおかしい、申し訳ないが彼女はおかしい、と述べている始末だ。Carlson氏は更に、このスケールでの詐欺的な決定的な証拠がないのであれば、選挙に不正があったと主張し続けることは無謀なことだと述べている。更に2021年1月には、彼はトランプと距離を置くことを待ち望んでいる。毎晩彼のことを無視出来る日が近づいている。トランプの勝ち目はないという内部メッセージが公になった。Murdoch氏自身もFoxがトランプの不正選挙の片棒を担いだが、それを止めることが出来たのに、しなかったと証言している。
Foxには直近で手元資金が40億ドル(5300億円)ほどあり、今回の和解金は7億8750万ドル(100億円)を払う余裕はあるが、別の投票機を製造しているSmartmatic USA社からも27億ドル(3500億円)で同様の訴訟を起こされいるので、どうなる事やらと思う。またCarlson及びFox Newsは元社員のAbby Grossbergから女性蔑視や宗教上の差別を受けたとして訴訟を受けており、彼女はCarlson氏からの酷い言葉をうけた証拠として90もの録音テープを裁判所に提出している。
この裁判でトランプが頼りにしていたFox Newsは、必ずしもトランプの選挙不正主張に一枚岩でなかったことが判明したわけだが、それでも、トランプの不正主張を報道していたFox Newsの責任は大きい。そのトランプ自身もレイプ容疑で民事訴訟を起こされており、更にこの夏にはジョージア州の州務長官を脅迫し選挙結果を覆そうとした事件での起訴が近いと言われており、トランプは訴訟のオンパレードである。FOX Newsとトランプはこれからも裁判の道のりは長く続きそうである。
さて、Fox社が支払った7億8750万ドルだが、これはビジネス上の填補損害賠償とされ、税法上、全てBusiness Expenseとして損金算入可能である。例えこのような費用を生む行為が不正だとみられても、アメリカでは、セクハラの場合を除いて、全て必要経費となる。日本にはなじみがないが、、アメリカではよくPunitive Damage、懲罰的損害賠償の事だが、これについても損金扱いとなる。一方この損害賠償金を受取る方だが、日本では課税されないが、、アメリカでは、これは身体的な傷害を受けた場合を除き殆ど課税対象となる。Dominion社にも課税される。また、弁護士が成功報酬で、弁護士料として被告により直接弁護士に支払われたとしても、原告には受け取った賠償金全額が課税対象となる。弁護士にも課税されるので2重課税だ。2018年のトランプの税制改正により、弁護士費用を損金扱いとすることが難しくなった。訴訟しても損害賠償受取の際の税金対策は、アメリカでは、より重要になったのである。

☆ 推薦図書。
アーサー・C・ブルックス著 木村千里訳 「人生後半の戦略書」 SBクリエイティブ 1870円
著者は一流シンクタンクの会長で、何冊もの著書をベストセラーにしている。にもかかわらず、幸福なわけでもなかった。これが仕事で成功した人が抱えている密かな苦悩だ。彼の数々の取材の中から見えてくるのは、成功すればするほど、満足できなくなっていき、人間関係の希薄さに悩む。ダーウィンは生物学者で、世界中に有名な進化論を表し「種の起源」は科学界を根本から変えた。しかしそれでも、ダーウィンは自分のキャリアに失望しながら死んでいった。高いスキルを持つ仕事ほど、40から50代前半には能力が衰え、キャリアが落ち込み始める。人生後半になると、柔軟な思考力が低下する。一方で年齢を重ねるほど過去に学んだ知識を活用する能力が向上する。人生後半を幸せに過ごすには、宗教や信仰を持つように年を取ると目を向ける。そうしたことによって、感謝の気持ちが増し、幸福を味わいやすくなると。

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