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アメリカ大統領候補トランプの税制改革(1)

一つの選挙で2年間も戦わなければならないのは、アメリカの大統領選挙ぐらいのものだろう。
共和党大統領候補として注目を浴びているのは、不動産王と呼ばれていたドナルド・トランプ。女性差別発言やメキシコ移民に暴言を吐き物議を醸しだしているものの、先週アメリカで感じたのは、それでも今のところ人気が非常に高いということだ。

 

そのトランプは先日、税制改革案を発表した。彼はアメリカの失業を42%と言っている。政府発表は5.5%だが、彼の計算式は全米で2億5100万人の成人労働者がいて、働いていない者が1億200万人という理由である(しかし、働いていない成人労働者のなかに学生がいたり、リタイアしている人もいれば、身体障害者もいると思うが)。さらには自分の資産は100億ドル(1兆2000億円)と公言して憚らないが、ブルーンバーグ社はせいぜい25億ドル(3000億円)と言い、フォーブス誌は44億ドル(5300億円)と見積もっていて、同誌の金持ちランキング、億万長者(資産10億ドル以上)リストの下位に位置し、世間の評価は厳しいものがある。

 

そして税制であるが、彼のプランによると、独身で年収2万5000ドル、夫婦合算では5万ドルまで所得税は免除され、さらに所得税の最高税率は25%に抑える(現行39.6%)。中間所得層にも現行税率よりかなり低税率を適用するとし、全体的に低所得者から高所得者まで減税の恩恵にあずかる。

 

さらにアメリカでは個人の確定申告書は日本と異なり、Form何とかが何十ページに及び、作成自体大変だが、彼は中間所得層以下の者には申告を簡素化し、現在約4200万世帯が課税されないことを証明するために作成している何十ページの申告書を1枚の書類で済ませるようにすると言っている。1枚紙のFormをIRSに提出するだけで事足りる。現在、全アメリカ世帯の36%は所得税を一切払っていないが、この数字が50%、すなわちアメリカでの半分の世帯が税金を払わなくてもよいようになると言っている。トランプは自分の税制改革は“I win”と読めると自画自賛している。

 

また、彼のプランは富裕層にも税率軽減になるということで、記者会見では富裕層であるトランプがトランプ自身の税率はどうなるのかと尋ねられたところ、超富裕層はあまりハッピーでない人も出てくるだろうと、お茶を濁し、さらに記者がトランプに、現在いくらぐらい税金を払っているのだと尋ねたところ、(以下のような会話は、日本の首相候補では天地がひっくり返ってもおこらないだろう)出来るだけ払わないようにIRSと戦っている“I fight hell to pay as little as possible”と言ってのけた。(Be continue.)

 

 

☆ 推薦図書 ☆
中島孝志著 『松下幸之助 その凄い!経営』 ゴマブックス 1,500円+税
長年の親友でもあり、松下幸之助研究の第一人者である中島孝志氏の著である。著者はPHP研究所に入社して松下電器(現パナソニック)の分析もしている。結果、幸之助は凄いということである。幸之助は一夜にして経営の神様になったのではない。神様以前の歴史が大事なのである。社員を信じて使うことが大事である。人の上に立つ者として腹を括った付き合い、つまり経営者として、人としての年輪は何回腹を括ったかで決まるという。正しいからといって、正論だからといって、それを押し通すことがどれだけ人を敵に回すか。正義が人を傷つけることが多い。
この経営の神様は、単に松下電器をつくって世界的な企業にしただけではない。PHP運動を展開したり、松下政経塾を開設した啓蒙家でもある。「事象は人にある。人を育てることはなにより大事である」を、信念を持って貫いた人である。まだ松下電器が有名でなかった頃、相手先から「あんたのとこ、なにをつくってまんのや?」とよく聞かれたという。そこで社員には「松下電器は人をつくるところでございます。併せて電化製品も作っております」と答えさせたという。
この著はふんだんに幸之助のエピソードを交えながら、幸之助イズムを解説している。経営者はもちろん、サラリーマンも非常に得るところが大きい、人生の銘である。

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