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トランプ大統領、住所をフロリダ州に移す、なぜ?

先週トランプ大統領はフロリダ州への引っ越しを発表した。多額の住民税を払っているのにニューヨーク(NY)では粗末に扱われているとツイートしていたが、NY州知事は「トランプがいなくなって清々する。ろくに住民税も払っていないし、フロリダ州どうぞあげます」とコメントしている。トランプ大統領はNY市で生まれ育っているが、フロリダ州パームビーチにも別荘を30年以上保有している。

ウオ-ル・ストリート・ジャーナルによると、多くの資産家は確かに税金の高いNY州、コネチカット州、カリフォルニア州からフロリダ州、テキサス州、ネバダ州へ引っ越している。これは、フロリダ州およびテキサス州ならびにネバダ州では住民税も州の相続税もないことが理由として挙げられる。一方、NY州およびコネチカット州では住民税も州の相続税もある。カリフォルニア州では州の相続税はないが、住民税は最高税率が13.3%と全米でも最高である。最近ではビリオネア投資家カールアイコン氏がNYを離れ、フロリダ州に移ると発表した。

日本では、住民税はそこに住んでいようといなかろうと、住民票を置いてある都道府県市町村が課税する。アメリカは戸籍謄本も住民票も印鑑証明書もない国である。したがって住民税は実際住んでいる市、州に納めなくてはならない。それゆえ、本当の居住地の判断を州は厳しく見ている。州税収入に影響するからだ。そのため、各州は通常二つのテストを行う。

一つは183日テストである。183日以上その州に滞在していれば、その州に居住していると見做される。これはしっかり自分でカウントする必要がある。その証拠作りとして、ローカルの買い物はクレジットカードやデビッドカードの使用を勧める専門家は多い。

二つ目は生活の根拠がどこになるかである。例えば、以前住んでいた州と引っ越してきた州における家のサイズや価値を比較し、大きいほうがよいこともある。また、カリフォルニア州では旅行の記録をチェックする。例えば、ある人がアイダホ州に住んでいると主張しても、航空チケットの記録がサンフランシスコ発着であれば、生活の根拠はカリフォルニア州にあると見做される。また、ペットがどこに住んでいるかもチェックする。

また、ここで重要なのは「Near and Dear Items」と言われる物がどこにあるかである。これは例えば先祖代々伝わる家宝のようなもの、アルバム、宝石等が当てはまる。このようなアイテムを引っ越し先に移動させておく必要があるということ。ビジネスオーナーがリタイアして他州へ引っ越しすることが多いが、なんらかの役職を会社に残しておくことは問題になるので、前の会社と縁を切らなければ問題になる。

トランプ大統領について言えば、ニューヨーク5番街の自宅を売却し、NY州とはNYでのマネジメントの繋がりは全て断ったということを合意しておいたほうがよいと専門家は言っている。ただし、NY州を去ったとしても、NY州で発生する収入はNY州で納める必要がある。トランプ大統領もTrump Foundationの詐欺行為絡みの疑義でNYの裁判所から、個人で2百万ドル(2億2000万円)を払うことで和解したり、ウクライナ絡みで民主党により弾劾尋問の手続を進められたりと話題には事を欠かないが、これからまたどのような騒動が起こるのか、毎日ローラーコースターのようなトランプ劇場は続くようだ。

日本では節税対策のために総理大臣が住所を変えたりするのは、あり得ない。しかし、世界では常識である。日本でも高額所得者であるサッカー選手や大リーグ選手、また松山英樹、錦織圭、大坂なおみなど、所得が億を超える選手は日本を居住地としていない、国籍は日本だが。誰も日本で確定申告していない。

ソフトバンクの孫社長でさえ、合法的であればいかなる節税もするといっている。経済もしかりだが、節税も今やボーダーレス化になった。

☆ 推薦図書 ☆
許永中著 『海峡に立つ』 小学館 1600円+税
イトマン事件から28年、「戦後最大の黒幕」と呼ばれた男が初めて書いた自叙伝である。彼の人生は「在日韓国人」という生まれを抜きにしては語れない。彼は大阪中津の生まれで、そこは在日韓国人と同和部落の混在したところだとしている。この本の中には多くの在日同胞が登場し、そして消えていく。そのすべてに貧窮と差別が見られる。そして同時に、彼らの民族の性ともいうべき「骨肉の争い」があり、祖国のそれとは違う在日という独特の「恨」を織りなしていった。この本の面白いのは有名人の本名が数多く登場することである。特に日本を代表する政治家、竹下登元総理や安倍首相の父親の安倍晋太郎、金丸信、そして暴力団の山口組や柳川会、会津小鉄会、マチ金のアイチに絡む京都銀行。当時私も少なからずその噂を聞いていたので、その真相を確かめる意味で面白かった。イトマン事件では住友銀行関係の実名が数多く出て、講談社出版の國重惇史著「住友銀行秘史」と大いにダブるところがあって非常に面白い。特に住友銀行の黒幕と名指しした、ヤメ検弁護士、小嶌氏は私もよく知る人なので大変驚いた。兎に角、その時代は去ったが、著者はその中で群を抜いたフィクサーで、延べ8年に渡る刑務所生活を経て、人生を語ったのである。日経新聞の「私の履歴書」では到底読むことのできない、許永中の「履歴書」である。

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