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国外に住む外国籍の相続人にも課税

2000年改正税法で、国外に居住する者にも日本の相続税・贈与税が課されることになった。それ以前は、例えばアメリカにある財産をアメリカに住む子に贈与しても贈与税がかからなかった。贈与税は日本では贈与を受けた者(受贈者)に課される。一方アメリカではその逆で、贈与をした者(贈与者)に課される。したがって、日本の税法ではアメリカにある財産をアメリカ居住者に贈与したとしても、受贈者がアメリカ居住者なので日本の課税権が及ばない。アメリカでは贈与者が日本居住者なので、アメリカの課税権が及ばないということで、ある種の人々でこういった贈与が半ば流行った。

2000年改正はこれを踏まえて、例えそのような贈与や相続が行なわれたとしても、贈与者、受贈者とも日本を離れて5年以内で、かつ日本国籍を有していれば、日本の贈与税、相続税がかかるとした相続税改正を行った。これにより、どちらか一方が日本を離れて5年以上でも、片方が日本在住なら全世界への財産贈与でも日本の贈与税が追っかけてくることになったので、ほぼ海外を利用したこのような相続税、贈与税の租税回避は終息するかに見えた。

しかし、それではと、日本国籍を離脱する者が出始めた。あまりにも日本の相続税が高いからである。名古屋地裁の判決で、生後6か月の乳飲み子に5億円のアメリカ国債を贈与した件でも名古屋国税局は敗けた。このように、子や孫に外国籍を取得させることにより、国外財産への課税を免れる事例が相次いだことから財務省は、外国籍を持つ受贈者(相続人)が日本国内に居住する贈与者(被相続人)から取得した国外財産を新たに相続税・贈与税の課税対象とする法案が準備された。

政権が変わろうとも資産課税が強化される。これほど富裕層に課税される国も少ない。そのうち贈与者、受贈者とも日本を見限って、国外脱出するという光景も決して珍しいことではなくなりそうである。

 

☆ 推薦図書 ☆

中島孝志著 『世界経済が沈んでも日本は必ず繁栄する』 さくら舎 1,470円
久々の中島孝志氏のエコノミックヒット作品である。毎年首相が変わる日本でも心配ない。戦前戦後14年の内13人の首相が出現したのだから。夏目漱石の引用文から始まる本書は、単なる今の経済分析ではなく、史実に基づいた日本経済の将来を記したものであり、アメリカとの関わり合いにおいて、政治、経済をどうすれば良いのかをわかりやすく解説している。なかでも吉田茂内閣誕生秘話から始まる今に至るまでのアメリカとの政治、経済の関係話は目に鱗の感がある。尖閣諸島や竹島問題などで揺れる昨今。この著は日本人にとって必読の一冊と言ってよいのではないか。

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