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不法移民への賠償金とアメリカ税制

先週は珍しくアメリカで日本の衆院議員選挙のニュースが流れた。テーマの一つに、日本の選挙とアメリカの選挙で大きく違うのは何だ、ということだったが、小選挙区で落選した議員がゾンビのように復活する比例代表制があるということと、選挙活動が街頭演説に制限され、候補者が有権者の家を一軒一軒訪問し直接個人に話掛けることが出来ないことだとあった。これによりメディアで露出の高い支配政党である自民党が有利になる傾向があるとも指摘していた。
さて、先週Wall Street Journalでは2018年の トランプ政権時代にメキシコ国境で、親子分離政策で身体的、精神的な被害を受けた不法移民の子供に対し一人45万ドル(5000万円)の補償金を出すという報道があった。現在5500人の子供が国境で親と離れ離れになり、940件もの訴訟が起こされている。米国司法省が中心となり弁護団と和解が進められており、金額の大小はあるが一家族当たり1百万ドル(1憶1000万円)の補償金が支払われ、総額で10億ドル(1100億円)になると言われている。
公民権運動を専門とする弁護士団は親と子供が強制的に別れさせられ、子供たちは医療体制も整わない寒い部屋で長い間留置され、それがトラウマになり精神的な問題を抱えたとして、一家族当たり3.4百ドル(3億8000万円)の補償を要求している。共和党はそのそうなことをすれば不法移民の流入を助長すると反対しており、政府内でも不法移民に対しそのような補償金を出すのはおかしい、特に補償金額が、9/11で亡くなった犠牲者に支払われた金額以上になることに異議を唱えている。因みに9/11の犠牲者に支払われた平均保証額が2百万ドル(2億円)と言われている。
これに対しバイデン大統領は今週になり、不法移民に対し補償金を払うことは一切しないと発言し、米国司法省と対立した。今回の訴訟では多くが不法行為による賠償請求であり、精神的、心理的な被害を治療する為の治療費をカバーする為の補償金を求めるというものである。2019年トランプ政権時代に和解したケースも何件かあり、その時は親と子供一人に対し12万5000ドル(1300万円)を支払う判決がおりている。
ここで考えなければならないのは、もし不法移民が補償金を受け取った場合の税金がどうなるかだが、不法移民でも米国で収入があれば税務申告が必要となる。Social Security Number(SSN)は取得出来ないが、 Individual Tax identification Number(ITIN)を取得し申告する義務がある。アメリカの税法によれば、身体的障害による補償金になれば非課税となるが、精神的苦痛による補償金であれば課税される。これには精神的苦痛による身体的障害(頭痛や腹痛)であれば課税となる。従って通常和解契約の文言がカギとなるのである。IRSでは、あざや骨折といった目でわかる身体的な障害があるかどうかをまず見る。但し、今回のように国境で親と離れ離れになり心的外傷後ストレス障害(PTSD)が発生したような場合の税法判断はクリアになっていない。。もし、IRSから非課税ではないと判断した場合、多くの場合、弁護士費用支払前のグロスの受取額に課税されてしまう。この場合、以前、弁護士費用を控除できていたが、2018年の税制改正により和解金に関する弁護士費用が控除出来なくなったので注意が必要だ。どちらにしても、日本では不法滞在者に対してこのような恩典があるはずも無く、日本では考えられない、移民大国アメリカの懐の深さと、金持ち国家である自負が見え隠れする。

☆ 推薦図書。
矢野康治著 「財務次官、モノ申す」 文藝春秋 11月号
「このままでは国家財政は破綻する」誰が総理になっても1166兆円の「借金」からは逃げられない。コロナ対策は大事だが、人気取りのバラマキが続けばこの国は沈む。私は次官の若いころに何度かお会いしたが、非常にすこやかで、東大法卒に多くみられる官僚っぽい嫌味が無い人である。彼は後藤田正晴氏の教訓として、「官僚は大臣や国会議員に対して、ただ単に報告や連絡を迅速に上申するだけでなく、それに的確に対処する方途についても、しっかりと臆せず意見を申し述べよと言っているのです。私たち国家公務員は、国民の税金から給料をいただいて仕事をしています。決定権は、国民から選ばれた国民の代表者たる国会議員が持っています。・・血税で禄を食む身として、落選するリスクもなく、職を失うリスクにも晒されていない公僕は、余計な畏れを捨てて、日本の将来をも見据え、しっかり意見具申せねばならないと自戒しています。国家公務員は「心あるモノ言う犬」であらねばと思っています」そして「国民のバラマキ歓迎は本当か」「消費税税引き下げ」など論外な意見や財政出動のあり方なども的確にモノ申した論が書かれている。日本国民必読の書であると言っても過言ではあるまい

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