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アメリカの贈与税について
先ほどアナハイムでエンジェルス対レッドソックス戦を見に行った、大谷は打たなかったが吉田が打った。久しぶりのMLB観戦であったが日本人が多いのには驚いた。
先日、アメリカ最高裁Clarence Thomas判事がビリオネアーのHarlan Crow氏から過去20年にわたり、多くの贈与を受けていたことが判明した。このCrow氏は米国大手デベロッパー Trammell Crow Companyを築いた Trammell Crow氏の三男で、Crow HoldingsのCEOをしており、共和党への大口の寄付者である。今回の事件で、彼の芸術品収集に中にナチの記念品があることや、カりブ海諸島にあるSt. Kitts and Nevisの市民権を取得していたことが発覚した。
Pro Publicaの報道によると、Crow氏はThomas判事に彼のプライベートやヨットでラグジャリーな旅行を提供したり、判事の甥の息子の私立学校の授業料の肩代わり、判事の母親の家を買ってあげたり、リノベーション費用を払ったりしている。従って今回の問題は裁判官の倫理及び開示義務問題に発展した。この贈与だが、アメリカでは、贈与税はもらった方にではなく、あげた方の、贈与者に課税されるのである。今回の場合はCrow氏に贈与税が発生するか否という問題になる。
WSJ(ウオールストリートジャーナル)によると、上院のFinance Committee chairman Ron Wyden議員は、書面でCrow氏宛今回の贈与に関わる税法の順守につき詳細に説明するよう求めた。(このレターでは授業料の支払いについては学校に直接支払いをしているので課税がないことを確認している。この制度は日本にはない)Crow氏宛の弁護士は、個人的な歓待であり、贈与に当たらない、また、家の購入は贈与ではないと回答している。
何が贈与にあたるかあたらないか、これはCrow氏、弁護士、恐らくIRS間で決めるものであるが、アメリカの税法では、何が非課税の贈与であるか細かく規定している。現行の贈与税法は富裕層が死ぬ前に資産を移転するのを防ぎ、相続税法を補強する為に1924年に施行された。現在の贈与税率は一律40%(日本のように累進課税ではない)であるが、2023年では一人1297万ドル、夫婦合算で2584万ドル(34億円)まで非課税となっている。これとは別に年間1万7000ドル(230万円)まで非課税枠があり、夫婦であれば受贈者に対し34000ドル(460万円)まで非課税となる。
それでは、例えば、高価な宝石を配偶者に贈与した場合はどうか?配偶者同士がアメリカの市民権保持者であれば、無制限に贈与が出きる。一方の配偶者がアメリカの市民権者でない場合は注意が必要である。市民権が無い配偶者への贈与は175000ドル(240万円)までしか非課税枠がないので雲泥の差である。IRSが贈与税で税務調査を行うことは稀だが、時々あるので注意が必要だ。特に市民権がない場合、気を付ける必要があり、最近日本人も金融機関を介してアメリカでの相続対策をする者も増えてきているが、日本人がトラストを作成する時も特別なトラストを作成する必要があり、知らずに時々、IRSに課税されているようである。

☆ 推薦図書。
洪自誠著 中村璋八/石川力山訳 「菜根譚」講談社 1430円
古典である。江戸時代より日本人に読まれてきた中国明代の書である。処世術の原典である。菜根とは野菜の根であり、つまり肉食などの美味しい食事に対して、粗末な食事の事を指す。これは、貧乏な生活に耐え得るような人であったならば、何事も成就することができるという意味である。処世訓は、例えば自分が他人に何かしてあげたとしても、心に留めてはならない。しかし人に迷惑をかけたならば、そのことを忘れてはいけない。また、他人が自分に対して恩義を与えてくれたなら、その事を忘れてはならない。しかし他人に対する恨みは、いつまでも覚えておかずに、忘れ去るようにしなければならない。幸福は、求めても得られるものではない。ただ楽しみ喜ぶ心を養い育てることが、幸福を招き寄せる根本の条件だと。この本は江戸時代以降、数多くの注釈本が出版され、今なお読み継がれているのである。一読に値する。

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