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税金取り立て屋、アメリカの場合

日本において、税金を払わず滞納になった場合は、税務署や国税局の徴収部門の職員がやって来て、預金や財産を差し押さえ、何とか競売にしてでも未納税金を回収しようとする。ところが、ご存知ないかもしれないが、アメリカでは、どうしても払わない税金滞納者には、IRS(アメリカ国税庁)は民間の取り立て屋に頼む。この取り立て屋は昔の日本の高利貸しの取り立てに近いかもしれない。このほどアメリカの財務長官Steven Mnuchinが議会での公聴会で、未納税金の回収を取り立て屋(Private Sector)に委任していることにつき、考えを聞かれた時“it seems like a very obvious things to do”と回答した。

 

即座にニューヨークタイムズが反応し、obvious(明白な)だがeconomical(経済的)でないと批判記事を書いた。納税者保護団体によると、昨年、IRSは6700万ドル(74億円)の延滞税を回収するのに2000万ドル(22億円)を取り立て屋に払っている。つまり、取り立て屋は回収分の25%を受け取っているということである。2015年に、共和党と民主党、両党賛成のもと、未納税金の回収に取り立て屋への外部発注を義務づけたので、現政権に対して批判ができない。当時1370億ドル(16兆円)もの未納税金の回収に躍起になっていたからである。

 

一方、取り立て屋にとって回収分の25%は大きい。大変なビジネスである。しかし日本でもサラ金の取り立てが問題になったように、アメリカでも取り立て屋の回収が厳しく、IRSは弁明で、納税者が生活費に支障が生じるようなことがないレベルでの回収をしているとしている。ところがこの保護団体の試算によると、納税者の収入が身体障害者に対する社会保障支払いを含めた最低生活保障基準を下回るケースが45%にものぼっていて、人権問題になると指摘している。

 

税務問題について、IRSは1年間に9500万回以上の電話相談を受け、そのうちタックスシーズンで60%を回答するとしているが、現実には40%に下がっている。IRSは何とか税務職員との直接コンタクトを避け、オンラインサービスの充実に向け奔走しているが、アメリカの多くの家庭で、このようなテクノロジーについていけていないようだ。2016年-2017年の納税者保護団体の調査によると、4100万人の納税者が家庭でブロードバンドの接続がなく、そのうち、何と、1400万人にはインターネットのアクセスが全くないという結果が出ている。さらに多くの納税者はオンラインサービスを利用するよりも、税務職員と直接電話で相談したいということである。

 

そして、2015年に両党で合意した法律であるが、5万ドル(550万円)以上の税金滞納者にはパスポートを発行しない。既に発行しているパスポートも無効にするというもの。保護団体は、そのような者にはIRSは前もって通知しないと、空港に行ってから「あなたは飛行機に乗れません」と言われても困る、と言っている。日本も未納税金は巨額にのぼる。このアメリカのパスポート措置を導入すると、相当な効き目があると思うが、どうであろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
牧田善二著 『医者が教える食事術』 ダイヤモンド社 1500円+税
著者は糖尿病専門医として38年間、延べ20万人以上の患者を診てきたという。一見同じように働いているビジネスパーソンに「健康格差」が広がっている。100歳を超えても元気でいる人がいる一方で、定年までに病死するのではなかろうかと思われる人も多い。
40歳前後のビジネスパーソンを100人集めたら、そのうち2割くらいは「健康上流」、残りの8割は「健康下流」だ。40歳代ではなかなか自覚がないが、50歳代あたりから現実的な病気と向き合うことになる。ビジネスパーソンに健康格差をつくりだしているのは、間違いなく「日々の食事」である。ちまたの健康法はウソだらけだという。箇条書きにエッセンスを紹介する。
・不調の原因の9割は「血糖値」
・食べる順序で太り方が違う
・オリーブオイルと白ワインは痩せる
・果物をジュースにしてはいけない
・炭水化物は「脂質」と一緒に食べる
・卵のコレステロールは気にしない
・プロテインの過剰摂取は腎臓を壊す
・シワ、シミ、ニキビも糖質が原因
・コラーゲンは食べても効かない
食の教養は健康格差社会を生き抜く武器であると著者は述べている。

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