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40年ぶりの改正相続法、混乱必至

約40年ぶりに相続に関する民法が大きく変わり、この夏から施行された。
最近の日本では遺産分割を巡っての兄弟間の争いが多くなり、毎年1万件を超える調停が裁判所に提起される。このため、法務省もこれに対処すべく相続に関する改正法を審議してきたが、今年から施行の運びとなった。

 

以前のブログでも触れたが、「配偶者居住権」は夫が死んで子が家を相続したとしても、子に直ちに「出て行け」と言われないように、最低でも6か月は、夫と暮らした家に住みつづけられる、とした新法である。考えてみれば、このようなものを法律にしなければならなくなった日本、親を敬うなど当たり前のことが明文化、義務化となった。法務省に言わせれば、叩き出される配偶者は後妻が多いとか。それにしても、辛いものがある。

 

次に「特別の寄与」である。これは、亡くなった人の遺産は法定相続人しか取得できない。遺言があれば別だが。親の看病を子がするのは当然だが、例えば長男の嫁が行った場合は、いくら献身的に面倒を見ても、義母の遺産をもらうことができない。昔は嫁が義母義父の看病をするのがむしろ当然で、それを放棄すると、悪い嫁だったのである。ところが最近は義父の面倒を看たのだから、遺産をいくらかよこせ、ということになった。長男の嫁が面倒を看たのだから、義父が亡くなった時には遺産は与れないが、遺産を相続した長男やその兄弟に対して金銭を要求できるようになったのだ。恐ろしいことである。

 

この新法はますます相続の争いを過激にする。例えば、長男の嫁が義父の面倒を看たのだから何百万円をよこせといったって、二男やその嫁も黙っていないだろう。むしろ面倒を看たのは私だと。このような新たな争いを裁判所はどう裁くのだろう。大岡奉行ではあるまいし、高級官僚が発想した、いかにも寄与した者にも財産をとは、限りなく兄弟間の醜い争いを助長するのではあるまいか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
小山聡子 『浄土真宗とは何か』 中公新書 860円+税
親鸞の教えは、どのように受容されたのか。日本最大の仏教宗派、浄土真宗。開祖・親鸞は、絶対他力の教え、悪人正機説など、思想の革新性で知られている。この本は、さらに平安時代の浄土信仰や、密教呪術とのつながりにも目を向け、親鸞の教えと、それがどのように広まったのかを、豊富な史料とエピソードに基づき描き出している。親鸞の師・法然から、親鸞、その子弟、室町時代に教団を確立した蓮如、そして東西分裂まで、浄土真宗の思想と歴史を記した労作である。親鸞が生きた時代は、経典読誦や念仏は呪術であり、それによって現世利益を期待し、さらには極楽往生できると考えられていた。親鸞はもはや自己の努力によっては成仏や往生を得ることができないと説き、自力による成仏を否定し、ただひたすら阿弥陀仏の力にすがり、念仏を称えることによって、他力によってのみ極楽浄土に行くことが可能とした。
本書は膨大な資料により書かれているので、学術研究としても価値があろうと思われる。

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