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パナマ文書で怯える日本人富裕層とアメリカの反応

膨大な資料がパナマの法律事務所「モザック・フォンセカ」から流れ出た。これには日本人400人も含まれているという。プーチンや習近平、さらにキャメロンをはじめヨーロッパ各国の首脳の名前も取りざたされ、辞任に追い込まれた首相もいたが、日本の法律に従えば、日本人は世界のどの国に現預金を置いても違法ではない。違法なのは、タックスヘイブン国に預けた預金等から生じる配当、利息やキャピタルゲイン等を確定申告しなかった場合である。日本の銀行や証券会社に預けたものは20%の源泉分離で確定申告不要であるが、日本国外のものはそうではないからである。このパナマ文書事件では、日本政府は何のコメントも出していない。安倍首相のゴールデンウィークでのヨーロッパ各国訪問と、北朝鮮の朝鮮労働党大会を日本のマスメディアは報じている程度だ。

 

しかし、アメリカの反応は早かった。オバマ大統領はタックスヘイブンを巡る企業や個人の課税逃れを防ぐ改正法案を米議会に上程した。法案内容は、匿名性の高いペーパーカンパニーなど、実質所有者や実質支配者が誰なのかを金融機関が国に対して報告することを義務付けるというもの。テロ組織の資金や、麻薬組織のマネーロンダリング、脱税資金の隠蔽などを防ぐということでいち早く、どの国よりも素早く手を打った。

 

現実には、ドナルド・トランプの確定申告は全く公表されておらず、一方のヒラリー・クリントンは「タックスヘイブンは超富裕層にとって税逃れの抜け穴である」と批判している。パナマ文書には著名なアメリカ人は全く登場しておらず、世界の富裕者の9割がアメリカにいるといわれているにも関わらずだ。しかし、アメリカのデラウェア州をはじめ、ネバダ州、ワイオミング州など、ペーパーカンパニーの設立が容易で、かつ仮名でもOKというところがたくさんある。

 

オバマ政権は、今月5日に税制改革案でこれらの法案の他に連邦法人税率の引き下げ(35%から28%)、さらにアメリカ国外子会社にある利益剰余金に課税する法案を提出する。ただ議会は、野党共和党は多数で法人税率の引き下げは賛成するが、アメリカ国内でのペーパーカンパニーの実質所有者の情報を共有する法案や海外資金に対しての新たな課税法案には反対すると言っている。アメリカの国益から考えると当然である。パナマ文書事件によって、世界の富はますますアメリカ国内に流入する。脱税逃れ防止法案は、事件が起こるたびにアメリカ大統領は声高らかに訴えるが、アメリカ議会では潰される。このパターンはアメリカでは常態化している。いつものガス抜きである。

 

このようなアメリカの政治風景と違って、日本はお金持ちを優遇する税制をとらないので、昨年設けた出国税をもろともせず、日本の富裕層のお金はアメリカに流れ込んでいる。そろそろ日本政府も財務省も真剣に考えないといけないのではないか。富裕層あっての日本経済であり、日本国である。共産国以上の格差のない平等社会、魅力のない日本に世界の富裕層や企業は投資をしなくなっている。

 

☆ 推薦図書 ☆
溝口敦著 『闇経済の怪物たち』 光文社 740円+税
著名な極道取材の第一人者、溝口氏の著である。闇社会、つまり陽に当たらない経済、グレービジネスでボロ儲けをする人々に焦点を当て、「裏」情報、出会い系サイト、デリヘル、イカサマなどなどを商売とするグレーなビジネスが存在する。完全に違法の商売とはいえないが、胸を張って公明正大な仕事かといえば、そうではなく、人に話すときには営む商売を隠すか、ぼかすかすることになる。程度の多少はあれ、後ろ暗さが拭えない仕事である。グレーはシロとクロの間の中間である。ある容疑者がシロかクロかまだ決めかねるなら、捜査陣はグレーに分類する。また収入源や交遊がヤクザであるならクロに区分し、ごく普通の一般人ならシロとなる。いずれにしてもグレービジネスは、いわば隙間産業であり、従来、事業家が見逃してきた分野で、消費者の欲望を察知し、その欲望と需要に応えるサービスや物を提供してシノギする。この著は、グレーでもクロに近い闇社会で、のし上がった成功者を9人取り上げた実録である。その中でヤクザ界の高倉健といわれ、カンヌ国際映画祭でのリモザン監督の「ヤング・ヤクザ」の主人公モデルが登場するが、その彼は東京の城南地区を縄張りとし、常に2~3人の若い衆が周りを固めているという。そして「人に好かれ、かつ恐れられろ」と配下に言っているが「嫌われていることを恐れられていると錯覚してはならない」とも言っている。見事な言葉である。堅気にも十分通じる。

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