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アメリカのチップ現状と課税

アメリカを訪れた際、何が面倒かというと言うと、レストランでの食事の後のチップである。請求書の後にチップの額を記入し、合計を記入しクレジットカードを渡す。チップを払うのは面倒だと感じた日本人は多い。アメリカ独特の文化である。パンデミックの初期では、低賃金とされるサービス産業に従事する人たちへのチップが多くなった。最低賃金は州や連邦で定められているが、チップを受け取る従業員に対してはFederal Fair Labor Standard Act of 1938により時給は2.13ドル、チップを受けた後の時給が7.25ドルに満たない場合は雇用主がその埋め合わせするとある。これは戦前の古い法律だが、この法律を採用している州は今だ13州もある。その他の週では独自の最低賃金を採用しており、私のオフィスがあるカリフォルニア州は最低賃金(時給)を15.5ドル(2000円)だが、これはアメリカでは例外的に高い水準である。
パンデミック中に変わったことと言えばIPad等のタッチスクリーンでクレジットカードの決済が出来るPoint of Saleシステムが普及したことである。このPOSシステム専門の業界のレポートでは、昨年第4四半期ではファストフードチエーンでさえもクレジットカードでチップを払っている人が48%いたと報告している。(2020年では37%)
このような形でチップが増加していくことをTip Creepとアメリカでは呼ぶが、最近ではスタバでもこのPOSを使用するようになり、購入の際スクリーンにチップの選択肢がある。スタバの最低賃金は時給15ドルで、さすがにこれに気づいた顧客は、やりすぎだとTikiTok やSNSで非難している始末だ。ただこの現象はスタバだけではなく、多くの場所でかなりアグレッシブにチップを求められるようになった。このデジタルPOSの進化は、サービス産業だけでなく、スーパーや修理屋にまであらゆる分野に及んできた。また以前は15%のチップが普通だったものが20%になっているのである。これはPOSのデジタルスクリーン上でも以前は 15% 18% 20%の選択肢だったものが、今では20% 25% 30%と表示しているものが多くなった。
勿論、国税当局IRSもこの状況は把握しており、チップ収入がどれだけ増加し、実際どれほどの収入になるのか、産業、地理、労働時間等様々な面からモニターしている。チップは社会保障費の対象となる収入で、本来従業員は雇用主にチップ受取額の報告を行う義務があり、それに従い雇用主は正しい源泉徴収を行うことになる。ところが、チップ収入は現金も多く、この把握が難しいことも確かである。一方で、IRSは税務調査を行えば、チップの未申告を摘発出来るが、実際には難しい状況である。そこで、IRSはこのPOSシステムに目を付け、雇用主に対し、POSシステムのデータ特に、チップに関するデータをIRSに提供させるようにし、雇用主が源泉徴収を正しく行わせようとしており、今後のIRSの出方が注目される。しかし、キャッシュビジネスは、どこの国も正確に個人の収入を把握できないのが現実だ。

☆ 推薦図書。
古屋星斗著 「ゆるい職場」 中央公論新社 990円
私ら団塊世代の時代と違い、今は労働時間も短くなり、パワハラ、セクハラも無くなり、職場の居心地もいいはず、つまり「ゆるい職場」に変わった。のに「若手が突然、辞めます、転職します」と言ってくる。なぜ若者は会社を辞めるのか、これは調査結果を基にした本である。上場会社など大手企業の正規社員(入社1~3年)の労働時間は短くなってきている。仕事の負荷も低くなり、居心地が良い、しかし彼らの退職率は低下していない。なぜか、その理由の第一は「不安」である。居心地がよくなる一方で、職場に対する「不満」が減り「ゆるい職場」になったが、実は、将来のキャリアの「不安」が高まっているのである。インタビューで「自分の成長にすごく時間がかかると感じる」の声が大きく、例えば「自分は別の会社や部署では通用しなくなるのでは、と感じる」こうしたキャリアへの焦燥感感や根源的な不安は「ゆるい職場」では消失しておらず、むしろ強まっている。会社を辞める原因を「不満型転職から不安型転職」に変わった。とした本である。

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