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アメリカIRSの新たなる標的とは

ウオールストリートジャーナル(WSJ)によれば、Inflation Reduction Act of 2022の成立により大幅に予算が増加したIRSは、富裕者層、パートナーシップ、暗号資産、脱税を指南するコンサルタントを重点的に調査すると報じている。 富裕層については特に25万ドル(3500万円)以上の納税義務を負っている1600万世帯の富裕者層に対し税務調査を行うとしている。更に、これらの富裕者層にはReport of Foreign Bank and Financial Account(FBAR)による 海外口座の開示をせず、海外財産の隠蔽を図る富裕者層がかなりいることが判明しており、合わせて税務調査を行うとしている。最近になくIRSはやる気満々だ。
また、資産が100億ドル(1兆4000億円)以上の大型パートナーシップ78件に対し税務調査を実施するとしており、更に、1年間で1000万ドル(14億円)以上の資産移動があるパートナーシップ約500件も脱税リスクが高いとして説明を求める通知を出す予定。パートナーシップではないが、ゼネコンにも注目をしている。ゼネコンは下請け業者に対し、下請金額につきIRSと下請け業者に対し1099(日本には無い制度で、支払った業者のリスト)を提出する必要があるが、IRSによれば、ゼネコンはその支払金額分を損金計上する一方、支払ったはずの下請け業者はただのペーパーカンパニーで、ゼネコンは実際に支払いをしていないスキームが、テキサスやフロリダ州で乱用されているといわれている。
暗号資産については、IRSが暗号資産交換所から裁判所命令で提出させた情報を分析した結果、暗号資産保有者の約75%が正しく税金を申告していない事が判明した。ビットコインの取引が開始されてから15年経過し、今では多くの人が暗号資産で売買を含めた取引をしているが、正しく税金が申告されていな状況が浮き彫りになり、いよいよ2025年度からアメリカ財務省は暗号資産取引所に対し株式同様、全ての取引をIRSに報告することを義務付けた。
IRSとしては、暗号資産は通貨ではなくモノと定義している。つまり株式や不動産と同じで取引をすればGainや Lossを認識する必要がある(日本も同様)。納税者は簿価を認識する為に、いつ暗号資産を購入し、いくら支払いをしたか、何を受取ったかを記録する必要がある。株式や不動産の場合は簡単だが、暗号資産は難しい。2025年度より交換所から発行される取引報告書は、2023年度取引分からの簿価は記載されているが、それ以前については納税者の責任となる。IRSは簿価を証明できる証拠がない限り簿価はゼロとしている(日本は売却金額の5%)。今後はIRSによる暗号資産取引が幅広く把握されるようになり、脱税者の摘発が大幅に増加すると共に税収の増加が見込まれそうで、予算が増額されたIRSの逆襲がいよいよ始ったと、ウオールストリートジャーナルが言っている。

☆ 推薦図書。
牛窪恵著 「恋愛結婚の終焉」 光文社新書 1034円
「恋愛は重い」「面倒」「コスパが悪い」などと、若者は恋愛をしない。この著者は「おひとりさま」「草食系男子」などの言葉を世に送り出したことで知られる。恋人がいない男女の4割は「恋人が欲しくない」と答え、欲しくない理由は「恋愛が面倒」3割が「恋愛に興味がない」である。そもそも「恋愛」と「結婚」そして「出産」をセットとしてとらえる「三位一体」の概念、すなわち「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」は18世紀~19世紀のヨーロッパ社会で生まれたのち、日本においても結婚の根幹とされてきた。しかし、この常識はわずかこの半世紀程度のものでしかない。恋愛と結婚は別、恋愛と結婚はイコールでないのでヨーロッパ貴族社会でも女性の不倫は珍しくない。むしろ流行ったくらいである。モーツアルトのオペラなども三角関係四角関係がテーマ、日本も明治時代の高貴な人たちは愛人をたくさん持っていたが家庭はそのまま。戦前まで見合い結婚が主流だった。三位一体社会だと恋愛と結婚は別なものだと割り切れない、恋愛を後回しにして結婚をしたいものが、なぜ現れるのか。さらに未婚化や少子化への対応策も書いてある。現代の若者の異性への行動哲学がわかる書である。

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