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ビル・ゲイツ(Bill Gates) の税金論

日本の所得税率、相続・贈与税率ともに最高税率は55%である。世界の超富裕の上の超富裕者、ビル・ゲイツ氏はThe Vergeというテクノロジー関係メディアのインタビューの中で、税金について彼なりの考えを述べた。先の選挙で、若干29歳でニューヨーク州の民主党下院女性議員として当選したアレクサンドリア・オカシオコルテス議員が、所得税最高税率の70%台への引き上げを唱えていることにコメントをしたものである。ビル・ゲイツ氏は最高税率が今までより高くなることに反対ではないが、オカシオコルテス議員が唱えている所得税率を70%台まで引き上げるというのはやり過ぎであり、的の外れた議論だとコメントしている。

 

Gates氏は、世界の富裕層の中でも更なる富裕層は自分たちの富に比べて、額に汗する勤労収入というのは微々たるものであり、そのためカルロス・ゴーンのような役員報酬に頼っている富裕層はわずかであり、ほとんどが株や債券、不動産等の資産を保有しており、そこからの収入、つまり配当及び利息等の不労所得がほとんどだと言っている。まとまった資金を調達する際には、これらの資産を売却するが、そこからの収入はキャピタルゲインであり勤労所得ではない。それがために、非常に低税率課税である。これは日本も20%課税で済ませるのと似ている。

 

過去のIRSの統計では、米国でのトップ400の富裕層の税率は20%そこそこで、所得税最高税率が39.6%(現在は37%)を払うような人たちとは全く別の世界にいる。そういうことなのでゲイツ氏は、税制改革で所得税率にこだわるのは全体像を掴んでおらず、焦点がずれていると指摘している。教育や社会保障制度を維持するにはそれなりの歳入が必要であり、強い累進課税が必要であるとも彼は一方では言っている。

 

ただしゲイツ氏は、富裕層に対する課税は所得税率のみに焦点を当てたものではなく、相続税、キャピタルゲイン課税、配当及び利息収入まで多岐にわたり累進性を強くすべきだと主張している。経済学者トーマス・ピケティ氏も富裕層への課税強化を唱えており、富裕層は伝統的に不動産の所有が多く、それらへの課税を行うことは道理にかなっていると述べている。現在、アメリカ政府の歳出が歳入を上回り、財政赤字に状態が慢性化している。赤字は気にせず、札の輪転機を回せばよいというのが現代の金融理論であり経済理論であるが、短期的にはゲイツ氏もGDPの150%までは許容できるものの、長期的には必ずインフレの副作用が出てきて自分たちに跳ね返ってくると指摘している。その意味で、歳入を増やすために更に強い累進課税は必要だとしている。それは一般の人たちに影響が出る所得税率ではなく、キャピタルゲイン、配当、利息課税や相続税に対する累進課税率の強化というような幅広い分野での課税を考えるべきと主張している。日本と違って、いかにアメリカの富裕層が税金を払っていないか、この言葉からもうかがえる。

 

アメリカではビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェット、ハワード・シュルツなど大富豪が、自分はもっと税金を払うべきだ、富裕層に対する増税を行うべきだと唱えており、保守層とは一線を画す。一方で、大幅な減税を行ったトランプ政府は大幅な財政赤字となっており、今回の国境の壁の問題を巡り非常事態宣言を出し、80億ドル(9,000億円)もの財源を確保しようとするトランプ・ホワイトハウスの行動は全く支離滅裂。今後アメリカ政治の益々不安定化することは確実だが、日本と異なりニューヨークダウが着実に上昇している。日本の報道がどれだけ真相に迫っているのだろうか?

 

 

☆ 推薦図書 ☆
掛谷和俊著 『名医が教える病気の見つけ方』 弘文堂 1,500円+税
健康の本の紹介が続くが、私の知り合いの名医シリーズでもある。この本は掛谷和俊医師という日本で№1の胃・大腸がんの権威で、現在は半蔵門胃腸クリニック院長、アメリカのベス・イスラエル病院でも学んだ。
タイトルは、20万例を超える内視鏡検査の実績に基づく警告・提言で「がんには症状が無い!」、だから早期発見、早期治療、そして予防であると。著者の専門である消化器の病気について詳しく説明し、そこから進んで、脳や心臓といった循環器系の病気、肺の病気についても言及し、患者は病院を選ぶのではなく、ドクターを選ぶことが失敗のない最適な医療を受けるコツであるとしている。
そして、がんにはなぜ症状が無いのか?がんは神経がある箇所に侵入し、転移しない限り、もしくは、お腹を突き破ってその姿を現さない限り、私たちがその症状を知ることができない。ところが、その段階まで至ったがん細胞は、すでに大きく成長し、病状はかなり進行し、治療が不可能となる。これに対し、ごく早期のがんではまったく症状が出ない「治るがんには症状が無い」。そこで、がんを早期発見するには、どうしたらよいかを本書で詳しく述べている。

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