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FBARに関するアメリカ最高裁判決と現実。

アメリカの税法では、アメリカ人並びにグリーンカードホルダーは、アメリカ以外の国に持っている金融資産は全てアメリカIRSに報告しなければならない義務(法律)がある。昨年末から年始にかけ、このブログで報告をしたが、アメリカ国外の銀行口座の開示を怠り、多大な制裁金を課されているアメリカ人二人の裁判だが、ついに、今年の1月及び2月末に最高裁判所での判決が下された。訴訟を起こした一人はMonica Toth 82歳、この女性は第二次世界大戦中、家族はナチスの戦火を逃れアメリカに移住してきた。1999年に父親からスイスの銀行口座を譲り受けたが、この際Repot of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR)を提出する義務が発生したのだが、その後10年以上何もせず、そのままだった。その後、FBARを提出し、必要な税金も支払ったが、IRSはこれを故意に提出を怠ったとして220万ドル(2億5000万円)の制裁金を課した。これに対し、Tothさんは修正憲法8条で定めたCruel and Unusual Punishmentであり、Excessive Fineであるとして控訴をした。IRSは、これは故意に行われたものであり、民事上の制裁金であると主張、最高裁判所は、結果、これを支持し、修正憲法8条の主張は認められず、220万ドルの制裁金が確定したのである。
もう一人は、Alexandru Bittner氏で、生まれはルーマニアで1980年代にアメリカに移住、市民権を取得したが、1990年代にルーマニアに戻り、事業で成功を納め、7000万ドル(80億円)ほどの蓄えをルーマニアやスイスなど(アメリカ国外)の口座に預けていた。その後2011年にアメリカに戻ったが、FBARの報告義務を知り、正直に、アメリカ市民権を獲得した1996年から2011年までの無申告分のFBARを提出したが、IRSは2006年以前は時効が成立しているとして、2007年から2011年の5年分につき272万ドル(3億円)の制裁金を課した。 Bittner氏はスイスを中心として272の口座があり、IRSは口座毎に制裁金を課したという計算だ。但し、Bittner氏もIRSも今回の未開示は故意に行ったものでないということで同意している。
Bittner氏は、制裁金は口座毎ではなく、申告年度毎である、今回であれば、5年間なので5万ドル(600万円)であると主張し、この訴訟も最高裁判所まで争った。その結果、IRSが負け、最高裁判所の判決はBittner氏を支持したが、その内容は5対4の僅差ということで、簡単な判決ではなかったことがアメリカメディアも注目したのである。ここで特筆すべきは、アメリカでは、お金無しには税金の裁判が出来ないということである。制裁金や延滞税が5万ドル以下であれば、事前の預託金などの支払いを行うことなくUS Tax Courtで裁判を起こせるが、5万ドル超になると、Tax Courtではなく、US District Courtもしくは US Court of Federal Claimsでの裁判となり、その場合、それらの制裁金や延滞税をまずは全て納めた後でないと、訴訟は起こせないのである。今回のBittner氏はそれだけの資金のある富裕層であり、また、Tothさんは豊かでなかったが税金運動団体が支援していたので、訴訟を起こせたが、通常の市民では、制裁金や延滞税が大きい場合、弁護士費用も多大で非常に厳しい、アメリカでは金を持っていないと自身の訴えも裁判所で出来ないというのが現実である。

☆ 推薦図書。
遠藤誉著 「習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン」PHP研究所 1100円
著者は吉林省長春市生まれの日本人、中国問題グローバル研究所所長である。習近平は昨年10月、二期が原則を破ってまで政権の地位に着いた。何故か、注目すべきは、新たな中国共産党の政治局員7人の最高指導部、実は、この6人は一人を除き皆、習近平の父・習仲勲と関係のある人ばかりである。彼の父は毛沢東の側近中の側近で、毛沢東の後継者だと言われていたが、鄧小平の陰謀により冤罪となって失脚させられ16年も投獄させられていたのである。毛沢東死後も習仲勲だけが釈放されなかったが、華国鋒主席のおかげで政治復帰が出来たのであるが、その華国鋒も鄧小平により失脚させられ、習近平の父も突然地位を奪われ2002年に89歳で人生を終えた。父が失脚してから半世紀、その復讐の怨念の深さは凄まじいものがある。対日、対米戦略そして台湾問題もすべては習近平の父の影響からだと、解説している。今までにない見方である。

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