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アメリカのMansion Taxとは

アメリカでは、日本でいう分譲マンションをマンションとは言わず、コンドミニアムと呼ぶ。アメリカでマンションという言葉はあるが、それは大豪邸という意味になる。ウオールストリートジャーナル(WSJ)によると、この大豪邸を売却する際にかかるMansion Taxについての記事があった。このMansion Taxについてはカリフォルニア州ロサンゼルス(LA)市でも施行され、500万ドル(8億円)以上の家を売却する際にこの税金が課税されるということは昨年このブログ書いたが、このようなMansion Taxが施行される市が多くなってきた。これは日本と違い高級住宅の値段が10億円以上というのは何ら珍しくもないからだ。ビバリーヒルズなどではむしろ5,6億円以下の住宅を探すのは難しい。
ニューヨーク(NY)市では、Mansion Tax は100万ドル(1.5億円)以上から1%の税金が課されるが、このMansion Taxを避ける為に、このような場合、最近110万ドルで売りに出し、 99万5000ドルで落とすことが多いようである。ただこの税金のかけ方は州によって異なる。このMansion Taxは、LAでは500万ドル以上の家では4%の課税、1000万ドル(15億円)以上では5.5%の課税となるが、NY市のように買主が払うのではなく、LAは売主が払う点で大きな違いがある。サンフランシスコ (SF)でも売主に対し課税される。このような課税は、不動産市況が停滞する原因となるとして不動産業界では反対している。実際確かに税金施行前に駆け込みの売買取引が多くなり、その直後は不動産売買取引が大幅に落ち込んだが、その後従来の売買取引数に落ち着いているようではある。
NY市では1989年にこのMansion Taxが施行され、その時は100万ドルの家はMansionだったろうが、アメリカの不動産価格の上昇から、2019年には、200万ドルでは2%前後、1000から1499万ドルでは3.25%、2500ドル(37億円)以上では3.9%とその課税率は累進課税のように高くなっている。SF市では、2008年に導入され、2020年には500万ドル以上1000万ドル未満では4%、1000万ドル以上2500万ドル未満では6%、2500万ドル以上では6%となっている。さすがアメリカで、日本では10億円、20億円の住宅が頻繁に取引されることはまずない、大谷の家が40億円50億円と言われるが、ビバリーヒルズではその程度の住宅価格は話題にもならない。
このMansion TaxはNY市では公共交通機関やホームレス対策、LA市やSF市は、ホームレス対策や低中所得者層向けの住宅建設の財源となっている。日本と異なりアメリカでは課税された税金の使い道は明確に示されている。アメリカでは7州及びワシントンDCでこのようなMansion Taxが施行されている。増税というと市民の反対が多くなるのが当然だが、これらの街ではホームレスが深刻化しており、富裕層が儲けたお金から税金をとるなら問題なしとする一般市民からの支持を得て、このような税制が施行されており、今後も全米に広がる可能性は高いようである。この種の税は市ごとに施行されているので注意が必要であるとWSJが言っている。例えばHollywoodやHollywood Hills は LA市だが、West Hollywood はLA市ではなく West Hollywood市だ。LA市は複雑に境界線が敷かれており、ロサンジェルス市と一口に言っても複雑だ。日本と異なり地方自治体の権限が強いアメリカならではの税金だ。日本も地方税収入を国からの交付金頼みせず、このような税金の使い道をしっかり市民に理解させ、市独特の税金を創設したらどうかと思うのである。

推薦図書。
山本謙三著 「異次元緩和の罪と罰」 講談社現代新書 1100円
著者は日銀職員の元理事で、エリート職員であったが黒田総裁の方針に疑問を呈する内容である。
先人たちが多くの経験から学んだ人類の知恵として、中央銀行(日銀)には「財政ファイナンスの禁止」「資産の健全性の確保」「独立性の確保」「市場介入を極力抑制すること」などの理念と枠組みがあった。世界の中央銀行はこれが脅かされることのないよう、皆で努力を積み重ね、頑張ってきた。黒田日銀の異次元緩和は、その知恵・努力をあまりにも軽んじた。異次元緩和の罪は日本経済の悪化を著しく促進させた。時の政府も共同でなし得たことと言え、この後遺症を打破するにはあまりにも大きな犠牲を伴う。ただ日本の市場経済を元通りに復元するには国民共通の痛みを伴う財政再建の道筋をつけなければならない。本書はこの回復へのつけを国民が理解し代償を払わなければならないとしている。

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