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パンドラ文書に見る世界の節税策

5年前、パナマペーパーが公表され、モザック・ファンセカ法律事務所が関与した富裕層の税逃れが露わにされ、世界中のお金持ちに衝撃を与えた。そしてOECDなどは、国際的租税回避の防止を図るべく課税ルールの見直し、課税、強化への動きを加速、結果、非居住者の口座情報を自動交換する制度、CRSを創設、法人税率の最低税率の設定など、新たな国際課税ルール作りを加速させてきた。
そして、出てきたのが「パンドラ文書」である。
「パナマ文書」の学習はいかされたのか。今回の文書は、タックスヘイブンに会社を設立・運営をサポートする法律事務所と信託会社14社の内部文書で、そこに記載された取引はなんと1190万件に上る。91か国、330人以上の政治家・政府高官もタックスヘイブンに関与していた実態が明らかにされた。中身を見ると、例えばブレア元英国首相はロンドンに不動産を購入した際、ヴァージン諸島の会社を介在させることで40万ドルの節税をした。その他、ケニヤのケニヤッタ大統領やウクライナのゼレンスキー大統領、エクアドルのラン大統領などは、税率が限りなくゼロに近いタックスヘイブン国を利用したことも明るみに出た。しかしブレア元英国首相は在任中に格差是正や富裕層への課税強化を訴えていたのには、笑わせられる。政治家以外では、元ビートルズのリンゴ・スターやエルトン・ジョンなどが目立った。日本では出るべく人が出た。孫正義ソフトバンクグループCEOである。自身が代表を務める投資関連子会社をイギリス領ケイマンに設立し、その子会社を経由してジェット機を購入し、アメリカの信託会社を受託者としたうえで、リース契約を締結した。これは孫氏、得意のスキームでもある。
まあ、いずれにしてもアメリカが参加しないOECDの課税強化策は所詮この程度であると、世界中の富裕層は思っているだろう。

☆ 推薦図書。
田中周紀著 「実録 脱税の手口」 文春新書 980円+税
著者は共同通信社やテレビ朝日などで在籍した、国税当局担当の敏腕記者である。
芸能人や会社経営者の脱税や所得隠しが大きなニュースになっても、その手口の詳細にについて報じるメディアは少ない。税金事件の取材を長年続けているベテラン国税記者が、実際に使われた「脱税の手口」の数々を解説している。「納税意識ゼロのチュートリアル徳井の所得隠し」「3億円稼ぐも確定申告しなかったAV女優」「最後にやられた丸源」「脱税で顧客の損失補填した元巨人軍投手」などなど実名入りで結構面白い。

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