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アメリカ国籍やグリーンカード放棄手数料とExit Tax

Forbesによると、アメリカ市民権者やグリーンカード保持者が市民権離脱もしくはグリーンカード放棄を行う際にかかる手数料が今までの2350ドルから450ドルに下がる可能性が高くなったと報道した。これは、Accidental American(たまたま米国人になっている)というグル-プがアメリカ政府宛訴訟を起こしたことに起因しているのだそうだ。2010年以前はこの手続きは無料だったが、2010年に450ドルとなり、2015年には2350ドルとなり、先進国の中では20倍以上の高さだとされている。(今回の改正で2010年の手数料水準に戻ることになる。)
今回の訴訟は、アメリカで生まれると自動的にアメリカに国籍を得る為、その後海外にずっと住んでいる人でも、二度とアメリカに戻らない人も、アメリカIRSに毎年、確定申告書をして、アメリカに納税しなければならないという義務が生じる。つまりアメリカ市民権及びグリーンカードホルダーは世界のどこで住もうが、そこの国で得た所得を、アメリカに所得税の確定申告をしなければならない。近年その申告がアメリカ税法が複雑になり(実は私もこのことで時間がとられ、困っている)そのためアメリカ国籍の離脱を希望する者が増加し、手数料のあまりの高さに値下げ運動が出てきたものと思われる。一方で、この手数料高騰の背景には、2010年にFATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)が施行され、アメリカ国籍やグリーンカード保持者にとって、アメリカ国外での所有資産の報告義務が厳しくなり、よってアメリカ国籍及びグリーンカードを放棄する者が急増したことで、国務省での処理費が高騰したものと推測されている。アメリカ市民権は一度放棄すると、20歳未満で放棄した場合を除き、再取得が困難になるが、2020年には6707人のアメリカ市民権およびグリーンカードホルダーがアメリカ市民権などを放棄しており、その数は増加傾向にある。
このFATCAでは一定の財産が海外にある場合、申告の際Form 8938で海外資産の開示を行う義務が生じる。また、申告書とは別に財務省宛海外銀行口座の開示義務もあり、それを怠ると莫大なペナルティが課される上、刑罰にも処せられ、刑務所行きの可能性もある(日本では考えられないが)特に海外に居住するアメリカ市民権者及びグリーンカード保持者には申告が複雑かつ、会計事務所への申告書作成手数料が高くなり、放棄者が増大すると共に、手数料の減額を起こす訴訟に発展したものと考えられている。
但し、アメリカ市民権もしくはグリーンカードを放棄するにあたり、アメリカ国務省に上述した手数料を払いその離脱手続きをすれば終わりではないのである。実は、ここからが問題である。アメリカ国外IRS宛過去5年間の確定申告が間違いなく行われているかを証明すると共に、Exit Taxを払う必要が出てくる。これが難儀である。Exit Taxは、純資産200万ドル(2億6000万円)以上もしくは過去5年間の平均納税額が19万ドル(2600万円)以上になる場合には発生する。Exit Taxは離脱する時点で、あたかも、その者の全所有資産を売却したとしてのキャピタルゲインに課税される制度である。国外転出時課税は日本がそれにまねたものであるが、なかなか国税局も把握できていないのも現実であるが、日本の国外転出時課税と比べて、アメリカのExit Taxは比べようもないくらい大きな税額になる場合もあり、これが脅威で離脱出来ないものもある。それに比べて日本の国外転出時課税は、誠に甘いものである。

推薦図書。
和田秀樹+奥村康 共著 「『80歳の壁』は、結局、免疫力が解決してくれる」 宝島社新書 990円
奥村康氏は順天堂大学医学部教授で免疫学の世界的権威者であり、この本は東大の和田秀樹教授との対話形式で書かれている。本のタイトルより、免疫学を学べる書である。免疫機構からコロナワクチンまで解説している。あらゆる病気、例えば癌や腎臓病、ほとんどすべての病気は免疫力の低下からきている。免疫はNK細胞の自然免疫とT細胞やB細胞の獲得免疫からなり、免疫は異質物を排除する能力を持っていて、例えばコロナワクチンなどは獲得免疫であり、生まれながらに持っている免疫は自然免疫である。いくらワクチンなどで免疫を高めても自然免疫が弱ければ病気にかかる。従って自然免疫を高めるにはどうしたらよいか、日本人の死亡第一は癌である。欧米は心疾患である。それなのに欧米の健康常識、医学常識を日本人押し付けている。免疫が強ければ癌にかからない。しかし自然免疫はストレスに弱い、したがって手術や薬を飲むと免疫力が落ちる。和田秀樹氏は高血圧、糖尿病であるが投薬はしない。あらゆるルールに束縛されている日本、マスクもそうだが、同調圧力、自己責任、監視社会からのがれ、脱真面目思考が重要だと。健康になるための本である。本当に参考になった。

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