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仮想通貨取り締まり強化、アメリカが法律を制定

このところ暗号資産交換所が問題を起こしている。FTX仮想通貨交換所が11月11日にデラウエア州でChapter 11を申請して以来、仮想通貨業界に多大な影響が出ていて、仮想通貨への投資家がパニック状態になっている。殆どのお金は戻らない、例え戻ったとしても相当な時間がかかると言われている。FTXは日本にもあるが、本社はなんとバハマにある。バハマ政府は破産のコントロールをしたく、11月15日バハマより指名された清算人がChapter 15を NYで申請し、破産裁判をバハマで行うよう求めている。
今後どのように進展するか、仮想通貨の交換所が破産というのは前代未聞であり、そもそも仮想通貨は交換所のものか、投資家のものも定かではなく、仮想通貨の法整備もない。バハマはFinancial Action Task Forceにより、モニターが必要な国として、2年前までリストアップされていた国であり、バハマは、個人所得税、キャピタルゲイン課税、贈与・相続税がなく、法人税もバハマ国内の所得を除き課税されないとして、タックスヘイブンのブラックリストに現在でも載っている。一方でマイアミから飛行機で1時間とアメリカにも近く、アメリカの顧客を呼び込みやすい一方、アメリカに様々な規制から逃れることが出来る絶好の立地であることには間違いなく、国もそれを謳っている。
アメリカIRSは現在、仮想通貨取引による脱税取り締まりを強化しており、2021 Infrastructure Investment and Jobs Actにより、仮想通貨取扱業者は顧客の仮想通貨取引全てを1099というフォームにてIRSに報告する義務が課された。IRSは2019年には約10万件の申告がされておらず、アメリカ全世帯の20%が仮想通貨で何らかの取引をしていることに比べると、あまりにも低い数字と言われている。この法律は、IRSが、無神経で、税金申告をしない多くの仮想通貨投資家を取り締まる目的で作られたものと言える。
この新しい法律は2023年1月1日から施行されるもので、2024年初頭に新しいフォームが配布される予定である。この法律は仮想通貨の税制を変えるわけではないが、納税者の仮想通貨取引が全てIRSに報告されることになり、確定申告のため納税者は今から準備する必要がある。これとは別に、連邦裁判所はeFoxという仮想通貨交換所と銀行契約を結んでいるM.Y. Safari Bankに対し、2016年1月1日から2021年12月31日までの間に、2万ドル以上の仮想通貨取引を全て、IRSに提出するよう召喚状を出している。IRSは新しい法律が施行される前に脱税の温床となっていることが予見される場合には、個別に取引開示を裁判所を通じて行っていくようである。アメリカでは銀行預金であればFDICにより25万ドルまで、証券であれば SPICにより50万ドルまで保護されている。今後、仮想通貨に対する規制は厳しくなることに間違いないが、一方、日本ではどうかというと、政府も国税庁も何にも手を打っていない。議員先生たちも、旧統一教会や大臣辞任問題に忙しいとはいえ、あまりにも無策ではなかろうか。

☆ 推薦図書。
毎日新聞取材班著 「オシント新時代」 毎日新聞出版 1760円
ロシアがウクライナに軍事侵攻して、今までの戦争にはなかったSNSを通じた情報戦の様相が繰り広げられている。なかでも、どれが真実かわからない情報が錯綜するなか、実際の被害の把握やニセ情報の把握に大きな存在を示しているのが、非国家主体による「オシント」OSINT=open-source intelligenceである。公開情報に基づくインテリジェンスなので誰でもアクセスできる調査手法である。例えばブチャはロシアが地元住民に一度も危害を加えたことがないと主張したが、NYタイムズは反論した。決め手は商用衛星だ。地上の画像の50㎝までb認識できる高度解像画像が、通りの遺体を捉えていたのだ。ロシアの大統領補佐官は真っ向から反論した。「使用した衛星画像に正確な日時の記載がない」と、、BBCは「その写真に写っている電柱の陰から正確な撮影日時がわかる」と、ロシアの主張の「決定的な欠陥」を指摘したこのことは、ファクトチェックの教科書だと言われた。この本はこのような具体的内容の数々であり、私としては、いかにロシアが遅れているかを痛感したのである。

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