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アメリカのコロナ給付金の複雑さ

アメリカ・フォーブスに昨年のコロナ対策給付金につき、親が不法移民で子供が米国市民権を有している場合、子供が米国市民権を有していても給付金が支給されなかったとして市民団体より訴訟が行われたが、敗訴したというニュース記事があった。この給付金は当初一人1200ドル、子供500ドルの給付を行うものであった。夫婦合算で申告し、片親が不法移民の場合、この給付金が全く支払われなかったが、その後どちらかが市民権者もしくはグリーンカード保有者になれば支給されることになった。しかし、両親が両方とも不法移民の場合、米国市民権を持った子供には支給されない状況が今も続いている。
今回のCARES (Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security) Actの支給対象者はSocial Security Number(SSN)(日本のマイナンバー)を持つ者と規定されている。ここで、不法移民でもアメリカ国内で所得を得るものは申告義務があるので、その場合不法移民でもIndividual Tax Identification Number(ITIN)を取得するが(日本人のアメリカ不動産取得と同じ)、この番号では社会保障は受けられない。今回米国議会の判断は、給付の対象が申告者(両親)であり、その扶養家族たる子供たちが非給付に対し訴訟を起こしても無駄だということだった。
今回の判決では裁判長は1976年のMatthews vs Diazにおける最高裁判決を引用している。この裁判は市民権を有さない不法移民がメディケア(米国65歳以上の適用される国民保険制度)を受ける資格があるかどうかについての判決だ。この判決では、米国と外国からの訪問者との関係を規制する責任は連邦政府で決められ、それらの決定事項はその時々の政治的、経済的環境により左右され、司法府より寧ろ行政府もしくは立法府により決定される。議会は非市民権者に市民権者と同じ権利を与える憲法上の義務は全くないことは明らかであるとしている。当然である、また、非市民権者の資格は米国での居住資格があるかどうかによることも明らかであるとしている。したがって、今回議会が給付をSSN(日本のマイナンバー)の有無により判断し決定したことは何ら違憲でなないとしている。
今回のアメリカの訴訟問題では、日本は決して対岸の火事ではないことを認識すべきである。日本でも給付金について所得制限などの議論はあるが、最近では外国人労働者、そして不法移民も増えた日本では、社会が複雑し、戸籍のない人たちも増加している。確かにアメリカ法のように、日本に生まれれば自動的に日本国籍が取得できるわけではないが、旧来の枠組みでは把握出来ない人たちにどこまで社会保障をしていくのかが、近い将来大問題になる可能性がある。島国日本で生まれ育った人々には、身近にそのような非日本人がいないが、国際社会に、否が応でも対応しなければならない。与野党とも、こうした問題に鈍感で、票に影響しない事態について反応しない国会議員に、このブログを通じて警鐘を鳴らした

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この本はPHP研究所の編集長から頂いた。著者は日本財団会長でもある文化功労者で82歳である。小話から見た中国の素顔、言論の自由の無い管理社会における中国人特有のユーモアのセンスと、たくみな表現で社会や政府を皮肉っている。大変面白い。例えば次のような小話がある。
アメリカ人:3億の人口のうち2億人が銃を所持しているが、社会は安定している。
中国人:13億人のうち軍と警察だけが銃を所有。庶民は包丁を買うのも実名登録である
アメリカ人:少年選手は学校以外の時間で訓練
中国人:少年選手は学校以外の時間で勉強
アメリカ人:オピニオンリーダーは政府批判を使命とする
中国人:オピニオンリーダーは政府賛美を使命とする
アメリカ人:テレビ・新聞は民間経営。何を報道するかは自らが決める
中国人;テレビ・新聞は共産党経営。何を報道するかは党が審査する
アメリカ人:政府が中国から巨額の借金をする
中国人:政府は人民を犠牲にしてアメリカの国債を買う

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