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「国外財産調書」をめぐって初の摘発

新しい税法が成立すると、必ず捕まる第一号者がすぐに出る。見せしめであろうか?日本人の富裕層が海外に資産を移す傾向がますます強く、日本の国税当局も必至で追いかけるのだが、アメリカをはじめ海外の金融機関の協力がほとんど得られないことから、昨年、富裕層は自ら海外にある資産が5000万円超なら国税当局に申告せよとする「国外財産調書制度」なるものができ、脱税がバレると通常より5%増の15%の加算税が適用され、最も重いのは1年の懲役刑となることになった。

 

このほど捕まったのが、半導体商社「トーメンエレクトロニクス」のインサイダー取引で起訴された戸田被告で、シンガポールに多額の資産があり、利息収入やシンガポール現地法人からの役員報酬などを日本で全く申告せず御用となった。彼はインサイダー取引の容疑者だから、徹底的に調べられシンガポールでの収入や財産が明らかになったのであり、通常ではなかなか見つかりにくい。

 

しかし、今年の7月1日からはもっと重い海外関係の税法が執行される。日本で株式などの金融資産を1億円以上所有する者が、シンガポールや香港などに移住や長期滞在する場合、日本出国時の所有株式を時価で売却したものとし、株式譲渡益を計算しそれにかかる税金を払って行けというもの。アメリカの出国税(Exit Tax)に倣ったものだが、シンガポールや香港に移住して日本の非居住者になった場合には、所有株式を日本で売却しても日本で税金がかからない。居住地国でかかるが、シンガポール、香港、スイスなどでは株式譲渡益は非課税である。それを狙って日本を脱出する者が後を絶たないことから今回の措置になった。

 

ますます重税国家になる日本、それを回避するために知恵を絞り行動する者。イタチゴッコであるが、クロスボーダーでの攻防は永遠に続くであろう。しかし何度もこのブログで書いたが、海外を利用して捕まった脱税のほとんどが「シンガポール」「香港」である。ここに送金すると「ブラックリスト」に載るというのが学習されていない。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
植木千可子著 『平和のための戦争論』 筑摩書房 820円+税
昨年7月、安倍内閣は集団的自衛権の行使を容認する閣議決議をした。安全保障政策は大きく舵を切った。これにより日本が他国から攻撃されなくても、攻撃された他国を守るために戦えるようになる。守るべき他国は米国を想定している。但し、集団的自衛権の行使により、日本がより安全になるのか疑問が残る。これまではイラク戦争に見るごとく他国からの要請があっても「残念だができない」と回答していたが、これからは「できるけど、しない」という回答になる。しかし集団的自衛権を行使するのであれば、以下の3つが必要である。まず、どんな場合に集団的自衛権を行使するのか明確にすること。2番目は、中国との関係改善をする。3番目は、前の戦争に対する日本人による検証である、としている。

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