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企業の中小企業化が止まらない日本

久しぶりにドメスティックな話題をしたい。この前も旅行大手のHISが資本金を247億円から1億円にした。税法上の中小企業の定義は資本金1億円以下の会社を言う。HISと同様に、いきなりステーキ、ワシントンホテル、回転寿司の銚子丸、KUDAN、久世など何百億円、何十億円の会社も減資し資本金が1億円以下になっている。資本金1億円超の会社が一番多かったのは2006年(平成18年)だ。その後、毎年毎年減少し続け、この15年で何と1万社が大企業ではなくなったのだ。先進国では他の国にない現象、なぜ、どんどん大企業から中小企業になるのか。答えは、ただ一つ「税金」である。普通、会社が赤字を出せば税金を払わない。ところが大企業の場合、「外形標準課税」というものがあって、赤字であろうが倒産寸前であろうが高い税金を払わなければならない地方税がある。そのほかにも大企業であるが故の税金負担が多い、「欠損金全額の繰越控除」「交際費課税」「設備投資減税」など数が多い。従来から政府の方針として、大企業と富裕者に過度の税負担を求める傾向が強い。なぜなら彼らは騒がないからだ。消費税などは1%上げるのに、日本では上や下への大騒ぎになる。多くの外資系企業も日本に本拠を持たない理由は税金にある。今後ますます個人富裕層の税負担が重くなるが、日本を脱出する者は少ない。しかし法人はそうではない。政府は税負担される側の気持ちを考えることをそろそろしないと、国際的に孤立する、いくら金融特区を東京に作るとっても絵空事である。しかし岸田政権は、この現象を、実体は大企業のくせに減資することによって中小企業を装い、けしからんとした。しかし中小企業化するのには事情があり、理由は台所が苦しいからである。民間のそうした事情を役所は考えずに「税逃れ」だという。このようなことから中小企業の定義を変えてくるのではないか、つまり資本金基準を見直し、従業員基準、例えば資本金は1億円以下でも、従業員が500人以上ならば大企業に該当するという新法律基準を作ると思われる。こうなると、資本金を1億円以下にしても大企業並みの税負担になるが、苦しい会社である、最終的にしわ寄せを被るのは従業員給与ではなかろうか。来年度税制はいよいよ大詰めだが、統一教会や与党のスキャンダルばかりを追い詰める野党、少しはこのような現実を国会で質問してみてはどうだろうか。

☆ 推薦図書。
川島隆太著 「オンライン脳」 アスコム 1397円
著者は東北大学加齢医学研究所の所長である。コロナ禍で、オンラインでのコミュニケーションが爆発的に普及した。多くの企業で、あるいは教育現場でリモートワークは日常化した。コミュニケーションには2通りあり、人と人が直接顔を合わせる「対面コミュニケーション」と顔を合わせることなく会話をする「オンラインコミュニケーション」がある。2つのコミュニケーションにおける「脳の活動」を東北大学の実験からわかったことは、対面では、参加者の間で脳の活動がシンクロする「脳の同期」が観察されたが、オンライン会話では「脳の同期」が生じなかった。この原因は、コミュニケーションの基本である「相手の目を見る」ことがない。オンラインの動画はなめらかではなく、音声と画像が微妙にずれている。これらのことから、SNSやスマホなどのデジタル機器をオンラインで長時間使うと、脳にダメージが蓄積され、脳本来の機能が低下する、この状態を「オンライン脳」という。危険な大問題だと著者は警鐘している。

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