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アメリカのインフレと税収増

日本は今、物価高に悩まされている。アメリカもそうだが、アメリカは賃金上昇がそれについてくる。日本は賃金が上がらないのにモノが上がる。典型的な後進国になったのである。
経済学を学んだことがある人は価格弾力性という言葉を耳にしたことがあると思う。最近大手企業CEOの発言で価格弾力性に言及する回数が多くなってきているのには注目に値する。例えば、価格が10%上昇したことにより、需要が5%低下したとすれば、価格弾力性は0.5となるという事だ。この数字が1以上であれば、価格弾力性が高いとされ、1以下であれば価格弾力性が低いと言われる。
通常、ガソリン、卵、トイレットペーパー等の生活必需品は価格弾力性が低いとされ、価格が上昇しても需要は下がりにくいとされている。一方、高級品や香水等非生活必需品は価格弾力性が高いとされ、価格の上昇とともに需要も低くなる。別に無理してまでも買う必要がないからである。アメリカではコロナ・パンデミック中にこの価格弾力性に変化が見られた、例えば、スポーツジム、外食、旅行等は価格弾力性が低くなったのである。ところが、今年に入りインフレが鮮明になると、Unilever, P & G, Heinzなど生活必需品を扱う会社のCEOは価格弾力性が高くなりつつあると警鐘を鳴らしてきた。
インフレ下で会社は、消費者の取り込みを図ろうとする。例えば、洗剤であれば温水ではなく冷水で温水と同じ洗浄効果があるとして、冷水使用によりガスコスト削減というコスト節約の効用を説くと、また、同じ値段で内容量を減らすという商品も多くみられるようになった、この現象をshrinkflationと呼ぶそうだ。
このように各社インフレ対策を行う中、IRSの発表によると、インフレにより税収が伸びているという。アメリカの消費者物価指数は8.3%だが、食品は11.4%、エネルギーが23.8%とかなりインフレが進んでいるといえる。これは税収にも当てはまるようであり、税収が昨年比23%増加している。対GDP比でも同様で、このままでいけば年度末の9月末で20.2%となる。これは昨年が18.1%であり、戦後のピークが2000年で20%となっている。第二次世界大戦中の1943年を含めるとアメリカでは20.5%がピークとなっているそうだ。また戦後の平均は17.2%である。
今回のIRSの発表を見ると個人所得税からの税収が最も増加し、32%上昇、これはコロナ・パンデミック中の株式市場及び不動産市場の高騰によるキャピタルゲイン税収入増加が起因すると考えられているようだ。次にPayroll Tax(給与の源泉徴収税)の税収が14%増加、更に法人税収入が12%増加している。法人税率が21%に低下しているにも拘わらず、法人税収が伸びている、これはインフレ便乗値上げによる利益増加という側面も否めない。IRSは8万7000人の税務署員増加(日本は全署員が5万5000人)を行い、今後税務調査の強化をすると明言している。新たな暗号資産やメタバースにも対処しなければならない。アメリカでは、これにより今後益々税収が更に伸びることは間違いないが、一方で日本は寒しいばかりである。ここにきて国力の差が日米で鮮明になった、

☆ 推薦図書。
高橋篤史著 「亀裂」創業家の悲劇  講談社 1800円+税
この本は偉大な創業者の2代目がどうなったのか、会社を追われたセイコー御曹司、ソニー創業者盛田昭夫の不肖の息子、コロワイド、HIS創業者とM資金詐欺など圧巻の取材と膨大な資料で解き明かす有名企業一族8家の相克を書いている。親子はいがみ合い、兄弟間で憎しみは広がり、叔父や従兄弟も巻き込んで衝突は激しさを増し、一族は四散の運命を辿る。その様子を見て一族にとって代わることを企む者が現れることも珍しくない。古代ギリシア神話も中世のシェイクスピア悲劇もそうしたテーマを基底としているから、人間の性(さが)は今も昔も変わらないか

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