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飯田家、相続税追徴40億円の怪

これは日本だけであろう。名義株というのがある。もっと言うなら名義預金という名称もある。不動産や上場株式など登記、登録しなければならないものは名義が変更された時点で当局が察知することになり贈与税等、課税対象となるが、非上場会社株式などの名義はよほどのことがない限り誰が所有しているか誰もわからないといってよい。

 

今回の追徴課税事件は戸建て住宅販売大手の「飯田グループホールディングス」の創業者の死亡に伴って、相続人が申告した相続税の申告書に偽りがあったとするものである。創業者・飯田一男氏の資産管理会社のオーナーが氏の長男である。つまり資産管理会社が飯田グループホールディングスの大株主であるが、その資産管理会社は長男の所有であるので、創業者の相続の際にも資産管理会社の株式の相続については相続税がかからないという仕組みである。しかし税務署はそうではない、創業者の財産であると判断した。つまり、資産管理会社株式で長男の名義株は創業者である親が資金を負担していたので親の実質所有であると。

 

日本の税法は所有者について「名義のいかんにかかわらず、実質、誰のものか」について規定している。3歳の子の定期預金10万円は3歳の子の所有ではなく、親である。あくまで名義だけとしている。資産管理会社の株式は「名義株」であったのだから、当然、創業者の遺産に含まれる。こうして、その名義株の相続税評価額は80億円とされ、その相続税額が40億円となったのである。

 

「名義株」とは表面の名義人の所有ではなく、それとは別に実質上の所有者が存在するということである。「名義株」の他に「名義預金」というものもあるが、「名義不動産」という言葉はない。これは不動産の名義が変わるたびに税務署がチェックしているからであろうか。よくわからない。このような名義なんとかはアメリカには存在しない。しかも、資産管理会社の株式の評価額が80億円とは驚きであると同時に、評価算定方法がいかにも日本的である。多分これがアメリカだったら、ほとんど評価はしないだろう。

 

非上場会社株式の評価は一応、税法では時価(相続税法22条)で評価するという。しかし、その時価とは国税庁が定める「財産評価基本通達」によらなければならない。例えば、土地は国税庁が定めた路線価、建物は固定資産税評価額というようにだ。同じ道路に面していれば、皆同じ価額である。アメリカでは当然、鑑定士の評価に基づく。日本の非上場株式は財産評価基本通達で定められていて、純資産価額方式か類似業種比准価額。類似業種比准価額方式とは、同種の企業の上場会社の利益、配当、純資産と比べて株価を算定するものだが、例えば、街の工務店の評価をするには、上場会社の「建設業」と比べて特殊な計算方法を用いる。

 

笑えるのは、日本の証券取引所は未だに、建設業や金融業、電力など職種で区別する。東レや日清紡は繊維だろうか。物品販売専業の光通信はNTTと同じ通信業なのだろうか。会社の定款に事業目的を書かなければいけない先進国は他にあるだろうか。ニューヨーク証券取引所をはじめ、世界の主要国の証券取引所に上場されている会社はアルファベット順である。業種別など分けていない。従って類似業種批准など計算できない。

 

日本では事業を家族が承継するときの一番のネックは税だといわれている。アメリカなどはその障壁はない。日本の同族会社株式の評価は驚くほど高い。同族という言葉も税法上、日本だけだろう。3姻族、6親等を税法上、同族というので、いとこの子まで入るであろうが、同族の者たちは皆同じ行動をとると定義している。それなら相続でもめることもないと思うが、それに異を唱える国会議員もいない。飯田ホールディングスの相続税問題で、ふと思ったものである。

 

 

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井上智洋著 『人工知能と経済の未来』 文藝春秋 800円+税
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する。AIの発達によって我々の身の回りのことも変わってくる。トヨタやホンダでは、東京オリンピックが開かれる年には人間に代わってAIが運転するセルフドライビングカーの実現が可能だとし、酒場で酔いつぶれてもスマホで無人の自動車を呼び出し、うたた寝しながら自宅に帰る。自動通訳や翻訳があたり前になり、英語など学ぶ者がいなくなる可能性がある。今、世の中に存在するAIはすべて「特化型人工知能」であり、一つの特化された課題しかこなすことはできない。将棋をするAIは将棋だけに、チェスをするAIはチェスだけ、それぞれ特化して作られている。ところが、人間と同じような知的振る舞いをする汎用AIが実現されたらどうなるのか。人間の労働が汎用AIとそれを搭載したロボットなどの機械に代替され、経済構造が劇的に転換する。今、差し迫っているのは技術的失業問題である。「銀行にATMが導入されて、窓口業務が必要なくなり職を失う」から始まり、予測では、その職を失うトップは、スーパーなどのレジ係(97%)、レストランのコック(96%)、受付係(96%)、ホテルのフロント係(94%)、ウエイター・ウエイトレス(94%)、会計士(94%)等である。私も他人事ではないが、アメリカの会計士はAIによって既に5万人が職を失ったと報道している。東京オリンピック以後の社会が恐怖である。

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