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インフレ抑制法と国税庁(Inflation Reduction Act&IRS)、アメリカ

先日Inflation Reduction Actが議会の承認を得て、大統領が署名した。このインフレ抑制法では今後10年間に約7400億ドル(100兆円)の歳入を生み出す一方、そのうち3690億ドル(50兆円)は気候変動と代替エネルギ-に投資され、結果、今後脱炭素化が進むものと思われる。これは昨年バイデン大統領が推し進めていたBuild Back Better Planが1.75兆ドル(230兆円)の規模であるのに対しかなり縮小している。
このインフレ抑制法では、売上10億ドル(1400億円)の法人に対しミニマム税15%を課し、また自社株買戻しに対し1%の課税を行うなどあるが、一般の個人に税務面で大きな影響を与えるものではないようだ。但し、今回の法律では、デジタル資産のモニタリングとコンプライアンス活動を追求していくと謳っており、今や大問題の暗号資産の取締りを強化していくものと思われる。次に、じわじわと影響が出てくるのが国税庁IRSに対する800億ドル(11兆円)の投資である。この投資額の大半は税務調査に必要な税務職員の人件費やIRSのITに費やされ、今後は税務調査の大復活だけでなく、大きく後れを取っていたテクノロジーも前進するものと思われる。
IRSは今後8万7000人を新規雇用する予定で、2026年までには1995年の雇用人数レベルに回復する予定としている。但し、パートナーシップや大企業の脱税に絡む税務調査は複雑で特別な税務知識を持った職員が必要で、育成には時間がかかる為、まずは電話で受け答えの出来る納税者に対するカスタマーサービスの人員を増やしていくことになる。今まで、IRSへの電話は10人に一人しか繋がらないと言われており、今後は大幅な改善が見込まれる。
共和党議員はこのインフレ抑制法が、インフレ抑制になるとは考えられず、議会では抵抗し、また、IRSに対する予算の増加は善良な納税者及び中小企業を苦しめることになると反対した。IRSには犯罪を取り締まるCriminal Investigation Division (CID)があり、アメリカでは税務職員には銃器の保有が許されている(かつてアルカポネを逮捕するのに打ち合ったのは税務職員)。アメリカでは銃器をもったIRS税務署員が家に来たら、まずは弁護士を雇えと言われる。この銃器には自動小銃も含まれ、2022年初めには銃器及び弾薬だけでIRSには70万ドル(9000万円)分の在庫があるという。
共和党議員は、今回のIRS予算増加により銃器や弾薬の購入が更に促進されるのではないかと懸念している。但し、この懸念は今に始まったことではない。2017年には既に4487丁の銃器と5,062,006発もの弾薬が在庫として確認されている。これからは腰にピストルを携えた税務署員が、いきなり調査に来るかもしれない。 恐怖である。

☆ 推薦図書。
渡部昇一著 「知的生活の方法」講談社現代新書 924円
著者はすでに故人だが、この本は120万冊売れたそうだ。知的生活とは、頭の回転を活発にし、オリジナルな発想を楽しむ生活である。この本は読書の時間が生活の中に大きな比重を占める人たちに向けて書いたものである。いわゆる「古典」と言われるものがある。シェイクスピアがそうだが、彼が生きている時代は、彼は単なる流行作家であったが、それが何百年もかけて、ますます超有名大作家になった。これが「古典」である、彼の作品は何百年もかけて上演され、また読まれ、時間をかけて「古典」となったのである。古典は「時間を置いて繰り返す」のである。この情報氾濫時代に、あなたは感銘を受けた本が何冊あったであろうか。あなたは繰り返して読む本を何冊持っているだろうか、その本を教えていただければ、あなたがどんな人なのかわかると。何年経ってもためになる本である。

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