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アメリカの節税方法、日本では考えられない

先日Pfizer (ファイザー)がイギリスのAstraZeneca社に1060億ドル(約11兆円)での買収を持ちかけたが、拒否された。イギリス政府もアメリカのファイザーにAstraZenecaを持っていかれるのには不快感を示していた。AstraZenecaのもともとの発祥地でもあるスウェーデンも自国にある研究機関がなくなり、雇用が削減されるので反対をしているが、ファイザーはその研究機関や特許の価値を大きく評価しているので、ぜひ買収したいとしている。だからファイザーは11兆円を出してでも欲しいのだろうか。ニューヨークタイムズ等の報道では、そうでもないらしい。AstraZeneca社を買収すれば、少なくとも年間10億ドル(1000億円)の節税ができるとしている。

 

アメリカの表面上の法人税の実効税率は日本と共に高い、約40%である。したがって本社を低税率国に移したいが、本社機能をアメリカに残しながら、登記上の本社を低税率国に移すことをInversionと呼び、アメリカでは脱税行為となり、大変な事態となる。ところが唯一の抜け道があり、低税率国にある同種の会社と合併し、本社をその低税率国に移転させる方法だ。イギリスの法人税の実効税率は21%であるので約半分の税金で済む。アメリカの上場会社でこの2年間に31社もこの方法で本社を海外移転させている。そして海外で法人税を納めている。海外の人気国はバミューダ、スイス、アイルランドなどである。

 

しかし、ここに大きな問題が発生している。ファイザーの株主である。株主にとって課税されるからである(この制度は日本の税法にない)。つまり、ファイザー株がAstraZeneca社の株式に転換されたとして株式譲渡益課税が発生するのである。これは大変な問題で、長年資産として同社株式を保有しようとする株主の相続税対策に影響がでてくるのである。日本では、相続した株を売った相続人は、その株の取得価額は被相続人が取得した価額だが、アメリカでは、相続された株の取得価額は相続時点で被相続人の取得価額から相続時点の時価にSet Upされる。そのため、相続人が相続直後その株を売ったとしても株式譲渡益課税はかからない場合がほとんどである。アメリカでの相続税対策としての常套手段である。

 

1984年(昭和59年)にファイザーの株を1株買った人は、30年後の現在までに、24回株式分割が行われていて、そのリターンは何と1650%である。それにプラスすることの配当を考えるとかなりの額である。1984年からファイザー株を持っている人がいると、かなりのダメージになり、その時点での株式譲渡益課税が発生する。日本のように20%の分離課税方式ではないので、高所得者には大変である。いずれにしても、日本の新聞には何一つ報道されないが、国際的に節税しようとする日本の富裕層には良い学習になるであろう。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
鈴木亘著 『社会保障亡国論』 講談社現代新書 840円+税
消費税率が8%になり、来年10月から10%になる。その理由として「社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指す」こととある。
しかし現在の社会保障費は年間で110.6兆円であり、GDPの4分の1である。消費税率が10%になっても、5%からの税収増は13.5兆円である。日本の社会保障費の最大の問題点は、高齢者世代の年金の費用を現役世代が負担する「賦課方式」を続けていることである。そのため莫大な純債務を抱え、年金、医療保険、介護保険を合わせた純債務は1500兆円を超える。したがって国民が皆、痛みを伴う抜本改革をするしかないとしている。

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