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アフガン撤退後、バイデン大統領のアメリカ税制はどうなるか

今日のブログの内容も、日本のメディアは報道しないので、あえて書く。報道のごとくアメリカ軍のアフガン撤退が終了し、アメリカ国内のこれからの重要課題にバイデン大統領がどう対応するか。第一は上院を通過した3兆5000億ドル(350兆円)のインフラ投資法案だが、これを下院でも通過させる必要がある。これはHuman Infrastructure Packageとも呼ばれ、社会福祉、メディケア拡大、気候変動に関する予算も含まれており、リンダジョンソン以来の大型社会福祉プログラムと呼ばれている。第二は中絶の権利だ。最近では妊娠6カ月以後の中絶を禁止する法律がテキサス州で発効され、最高裁もこの制定された法律に対する反対の意見を聞かないとの判断をした。日本でいう却下である。つまり妊娠中絶は違法となった。判決内容で目を見張るのは、この法案の中には中絶をした医者だけでなく、中絶を行う女性を運ぶ者(運転手)も罰するとしている、そのため、UberやLyftは、もし運転手が訴訟を起こされるリスクもある為、弁護士費用は全て会社が負担すると発表している始末である。これに対し、この法はとんでもないとして、バイデン政権はテキサス州を訴え、更に中絶の権利を守る連邦法の制定をもくろんだのである。。第三は債務上限問題で、来月10月には政府資金が枯渇するが、共和党が債務膨張を懸念しており、政治的なきわどい駆け引きとなるであろう。第四は2002年Military Force Authorizationの撤廃である。既に下院を通過しており、上院で可決の段階に入った。この法律はブッシュ政権により9.11後、イラク進攻の際、アメリカ軍隊の使用を 大統領の権限で行えることを議会が可決したものだが、既にサダムフセインやビンラディンもいなくなり、新たな局面を迎えた。この法律の撤廃のため、今後のアメリカ軍のイラク駐留にはある程度の影響は出て来るのは必死である。
さて税制であるが、バイデン政権は、このインフラ投資法案の中で富裕層への増税も盛り込んでいる。特に長期キャピタルゲインの優遇最高税率を現在の23.8%から所得税率と同じ43.4%への増税を提案している(内3.8%はメディケア税)。過去100年間、アメリカ税法ではキャピタルゲインという投資収益に対して、投資リスクを部分的にも補うと意味で、長期投資に対して有利な税率を適用してきた。また、過去100年間、相続に伴うキャピタルゲイン税をも免除してきたが、今回相続時に自動的に取得価格を死亡時の市場価格に調整するStep-Up税制を廃止することも盛り込まれている。(日本では相続で取得した不動産などを売却した場合は、被相続人の取得価格をそのまま引き継ぐが、アメリカではオートマチックに取得価格は相続時の時価に引き上げられる)
長期キャピタルゲイン優遇税率の恩恵を受けているのは、間違いなく富裕層である。バイデン政権では年40万ドル以上(4000万円)の所得層に対し増税を行うとしているが、キャピタルゲインに対しては所得1百万ドル(1億円)以上の納税者に対しこの増税を適用するとしている。議会の税務委員会の計算では、これらの富裕層が増税の影響を受けるわけだが、年収817,000ドル(9000万円)から360万ドル(4億円)の所得層では平均43,000ドル(450万円)の増税、360万ドルの所得層では130万ドル(1億5000万円)と大幅な増税となる。、一方で年収40万ドル(4000万円)以下の納税者も増税となる場合もありそうである。例えば、ボストン在住で30年以上持ち家に住んでいたような人が家を売る場合、キャピタルゲインが相当あり税率が43.4%になる場合も多くなる。現在の居住用財産売却の控除50万ドル(5000万円)(独身の場合25万ドル)では収まらなくなる。(アメリカでは年所得4000万円以下は一般普通所得である)。そのためバイデン政権は居住用財産の特別控除を125万ドル(1憶3000万円)まで引き上げる提案をしている。デフレ状態の日本と違って、アメリカは毎年賃金が上がる。物価も上がる。特に不動産と株が特に顕著だ。日本では居住用財産の譲渡益は3000万円の控除はあるが、アメリカでは5年も住めば、簡単に5000万円の譲渡益が出るところは珍しくない。このように、個人の税制の日米の違いを見ると、まさに「安い国、日本」を実感させられる。

☆ 推薦図書。
木村尚敬著 「修羅場のケーススタディ」 PHP研究所 957円+税
サラリーマンであると上司から理不尽な指示、チーム内のプロジェクトの行き詰まり、社内不正、リストラによる大混乱・・・この本はリーダーが直面する「修羅場」の数々をケーススタディとして示し、それを切り抜けるための思考法を説いている。
修羅場を切り抜けるのは、一にも二にも、リーダーがいかにリーダーシップを発揮するかにかかっている。そのリーダーシップを発揮するには、次の2つが必要である。
① ポジションを取る、何事においても「自分はこう思う」という意思表示を明確に行う。例えば「AとBという選択肢がありますが、いかがいたしましょうか」と上司に問うのではなく、「AとBという選択肢がありますが、私はAだと思うので、それでいかせてほしい」といえるかどうかが問われる。
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ところで、立場の強い人に勝てるわけがない。
この本は数千人規模の会社の中堅、若手社員必読の書である。

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