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アレサ・フランクリン相続税対策をせずに死ぬ

ソウルの女王といわれたアレサ・フランクリンが8月16日に亡くなった。76歳だった。テネシー州メンフィスに生まれミシガン州デトロイトで育ち、1961年にレコードデビューを果たして以来50年以上にもわたり第一戦で活躍してきた。その間、グラミー賞の受賞数は何と20回。その偉大なる彼女もすい臓がんで、デトロイトの自宅でこの世を去った。彼女は離婚しているが、4人の子供がいる。うち1人はSpecial Needsが必要な子。

 

Forbesによると、アレサの死後、相続税対策が全く行われていないことが判明した。彼女には遺言書もなく、トラストも組んでいない状態だった。これは歌手のプリンスが相続税対策を全くせずに亡くなったことを思い出す。そして死後、もめにもめたのである。アレサの弁護士は早く相続税対策をしようと持ち掛けていたのであるが、彼女はなかなか承諾しなかったと言っている。「大体、遺言書がない場合は、家族同士でもめ事がおきて争うことになるが、アレサの家族がそのようなことにならないことを望む」とこの弁護士はコメントしている。

 

2017年Caring.comが行った 調査によると、米国アメリカでは10人の内4人しか遺言書やトラストを作成していなく、ジェネレーションX世代(1960年代初頭もしくは半ばから1970年代に生まれた世代)では64%が、ベビーブーマー世代(第二次世界大戦以降、1940から1950年代生まれ)では42%が遺言書も作成していないとしている。多くが「まだそこまでやっていない」と回答をしているそうだ。アレサの財産は8000万ドル(90億円)と評価されている。多くの方々はそこまで資産がないかもしれないが、相続税対策は税額だけではない。残された人たちに本人が望むように財産を分配するのも目的である。

 

それでは遺言書やトラストが無い場合がどうなるか。まず、米国では州のプロベート裁判所が取り仕切ることになるので、資産の詳細が公に知られることになる。また、プロベートと呼ばれる財産の検認作業があり、時間及び弁護士費用が膨大にかかる。アレサの資産が8000万ドルとすれば、2018年は1118万ドル(14億円)までは基礎控除(日本は5400万円)で非課税となるが、それを超えると40%の相続税がかかる。つまり、連邦政府により2750万ドル(30億円)の相続税課税を受けることになる。また、うまくトラストを組んでいないと子供たちが死ぬ時に、更に相続税がかかることにもなりかねない。

 

遺言書やトラストを作るとなると弁護士費用が発生するが、それを十分に上回る効果はある。特に、今回のようにSpecial Needsを持った子供がいる場合には、Special Needs Trustを作成することも視野に入れたほうが非常に得策だ。勿論、更なる弁護士費用やマネジメントフィーが発生するが、安心を買えるということになる。どうして、これだけの有名人であり資産家が相続税対策を行わないのか理解に苦しむが、日本人と同じく、わかっているけど、ずるずると出来ないというのが生身の人間であるということかもしれない。しかし死後その代償は高くつく。

 

 

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EUはついに「一般データ保護規則」GDPRを制定した。これは、企業は個人データの削除要求に応えなければならない、個人はデータがいつハッキングされたか知る権利があるなどであるが、なかなか難しいとしている。

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