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アメリカ歴代大統領の所得税の不思議

フォーブスによると、アメリカ下院委員会及びニューヨーク州マンハッタン地区検察は、トランプ大統領の確定申告書を作成している会計事務所に対し、過去8年間の確定申告書の提出に関し訴訟を起こしていたが、いよいよ最高裁判所で争うことになった。これは、トランプ大統領と付き合いをしたとされる元ポルノ女優に対し、2016年の大統領選挙資金の一部を口止め料として使用したという疑義がかかり、申告書は金の流れを掴むために必要だとされるものだ。もともとトランプ大統領は申告書の開示をすると繰り返し約束してきたが、一方で、税務調査が入っているので申告書の開示は出来ないと主張している。しかしIRSは、これは間違った見解だと表明している。

では、どうしてトランプ大統領は自分の申告書の開示を拒むのか?過去40年以上、全ての米国大統領は申告書の開示をしてきている。なぜ申告書を公表しないのかについては、トランプは殆ど税金を払っていないので恥ずかしいからだ、ということを唱える人も多くいるが、ワシントンポスト、ポリティコ、ニューヨークタイムズなど各誌は、殆ど税金を払っていないのではなく、長年にわたり全く払っていないからだと報道している有様だ。

それでは、過去の大統領はどうであったかということだが、大統領在任期間中ではあるが、7人の大統領が全く税金を払っていないということがわかっている。日本では考えられないことだが、アメリカでは、合衆国憲法に大統領の報酬は増やすことも減らすこともしてはならないと記されているのである。この解釈は少なくとも1920年の終わりまで、議会も大統領も連邦裁判所も、大統領の給与に課税することは出来ないと考えられてきた。これにより、リンカーン、ジョンソン、グラント、タフト、ウイルソン、ハーディング、クーリッジの7人の大統領は給与に対して税金を一切払っていない。

南北戦争で1862年に特別に設けられた租税法により、全ての民間、陸海軍、連邦政府の職員は給与の3%の税金を払うことになり、リンカーンはこれにより3%の税金は払っていた。ところが、1869年に当時の司法長官は大統領に課税は出来ないとして、リンカーンのEstateに払った税額を全額還付している。これはジョンソンもグラントについても同様だ。したがって、タフト大統領は税金を全く払っていない。1921年にハーディングが大統領になると、自分の給与に対して税金を払うとの意思を示し、実際に税金を払った。1923年、彼は在任中に死亡し、その後、副大統領であったクーリッジが大統領に就任。彼もまた税金を払っていたが、その後、財務省は大統領が税金を払うことは憲法違反として税金の還付を行っている。

フーヴァー大統領以降、大統領の税金の支払いについては公の記録がないが、ルーズベルト大統領やトルーマン大統領については確定申告書の記録があり、税金を払っていることが確認されている。アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン大統領については申告書の記録はない。ニクソン大統領については給与に対して税金を払っていたことはわかっている。1973年以降全ての大統領は、自分の申告書を公開し税金を払っていることが確認されている。トランプ大統領によってこの記録が途切れてしまったが、彼の場合、大統領になる前からも税金を全く払っていなかったのか、最高裁判所の判断が待たれるところだ。

☆ 推薦図書 ☆
近藤誠著 『医者の大罪』 SB新書 850円+税
慶応大学病院の著名な医師の著である。この本は「医者の巧妙なウソにだまされない心得」をテーマに書いている。
今、日本では、医者が患者をだまして命を奪おうという、一種の殺人のような行為が横行している。医者はなぜ、「自分の都合」でウソをつくのか?その背後には、一人の医者にはいかんともしがたい、「医療界の病理」が存在する。無意味な治療を遠ざけ、ダメな医者の手にかかることなく、元気に長生きするための方法を指南する。
私も同感するのは、人間ドックや健診の制度がある国は日本だけである。健診の結果、健康体にもかかわらず、早期発見がんと言われ、嫌々ながらも手術に突入する。なぜ今見つかったとされるがんが大きくなるのか、今転移していないがんを放っておいたら転移するという考えは間違いなのだ。そのため、必要のない治療を受けて、多くの悲劇が生まれている。
高血圧治療にしても同様である。日本人の4300万人が高血圧であるとされている。降圧剤は欧米では、その発がん性が言われており、しかも血圧をしっかり下げると、患者は不健康になり、死亡率は上昇する。など、為になる本ではある。

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