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来年度税制、アメリカ議会、成立間近

私は今、アメリカのホノルルにいる。本日のホノルルマラソンを走りに来たのではない。ビジネスだ。それにしても、ここはメインランドからの観光客が多い。アメリカ景気の良さを窺わせる。

 

日米ともに来年度税制の大詰めに来た。日本は所得税改正で年収850万円以上のサラリーマンを富裕層と決めつけ、かなりの増税である。不思議なのは、連合も一般サラリーマンも“サイレンサー”である。欧米では考えられない。自分の手取りが減るのだから、それなりのアピールをするべきである。マスメディアも言わない。850万円の収入でも、手取りはもっと少ない、それが富裕者かどうかの疑問は呈すべきである。

 

一方、資産課税はどうであろうか。アメリカは相続税の基礎控除が600万ドル(6億7000万円)に引き上げられるが、上院下院とも、いずれは相続税を廃止しようとすることにおいての合意はできている。遅くとも2025年までという。

 

法人課税はどうであろうか。日本の実効税率は約30%であるが、安倍内閣は、賃上げをした企業やIoT、AIなどに関連する設備投資をした法人などは、その税率を20%台にするとしているが、それ以外は現状のままである。アメリカはどうだというと、上院、下院とも税率を20%とすることに合意しており、下院は2018年度から、上院は2019年度からとしているぐらいの違いである。

 

日本の税制は税改正によって、どれくらい財源を確保するかであり、アメリカは、どれくらい減税ができて、景気を刺激するかである。そのため、日本の税制改正では財務省より強い自民党税制調査会長が就任しない限り減税先行とはならない。

 

次にアメリカ法人税制の目玉は、海外現地子会社の利益を本国アメリカに還元した場合の措置である。日本の場合は、海外子会社の利益を日本本社に送金しても95%は非課税である。アメリカはそうではなく、一般の利益と同様に課税対象となる。そうなると、低税率国の海外子会社に留まった利益はアメリカに還流されなくなり、アメリカ本社の投資にも使えない。そこで今回の改正で、日本のように海外子会社留保金をアメリカに還流しても非課税とする案は、上下両院で一致した。

 

アメリカ大企業が海外子会社に留保している利益剰余金は、ファイナンシャルタイムズによると、なんと1兆3000億ドル(150兆円)、日本の国家予算よりはるかに大きい。これがアメリカ本国になだれ込むのである。アップルの海外留保利益は2520億ドル(28兆円)で、アップルはこれによって470億ドル(5兆3000億円)も税額が減少し、この新税制で最大の恩恵を受ける企業となる。その次はマイクロソフトだが、その額は1320億ドル(15兆円)の留保利益で、かなりの差がでる。

 

しかし共和党(与党)のこの税制改正案は、来年1回限りの減税措置であるとしているとともに、将来の海外子会社にはアメリカは課税しないとして、アメリカの巨大企業は大きな恩恵を受けることになる。日本のように賃上げをした、あるいは、AIに投資をした企業だけに僅かな恩恵があるのとはスケールが違うというべきであろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
野口悠紀雄著 『仮想通貨革命で働き方が変わる』 ダイヤモンド社 1500円+税
著者はご存知の元大蔵省キャリアである。彼は官僚であるにもかかわらず珍しく庶民的な発想を持ち合わせているので、私も愛読者の一人である。この本では、「働き方革命」とは組織に依存せずに働くこと、つまり主体性のある「フリーランジング」という働き方や、それを可能にする新技術について書いている。
フリーランジングとは、組織に雇われない働き方のことであり、最近のITの目覚ましい発達や仮想通貨の出現により、フリーランサーの働き場所が出現してきている。
アメリカを見ると、このフリーランサーが急増している。2つに分けると、
①クラウドソーシング・・・組織内で行っていた仕事の一部を切り離してアウトソースするもの
②シェアリングエコノミー・・・個人の資産や耐久消費財を需要者に一時的に使用させる。自動車などである。
今年4月に、改正資金決済法が施行され、仮想通貨が正式な決済手段として認められた。世界中の相手と、いつでも迅速かつ低コストで取引できる仮想通貨は、個人事業におけるより多くのチャンスを与える。さらにブロックチェーンの技術が近未来を一変するとしている。名著である。

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