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コロナ給付金、日米の差

私のオフィスのあるロサンジェルス、そこのカリフォルニア州知事は連日行われる記者会見で発表されるコロナ感染の動向の中で、カリフォルニア州での感染リクスの一番高いビジネスはネイルサロンだと発言していた(日本とは環境が異なる)。更に、スポーツジムと理髪店・美容サロンを加えれば3大感染リスクの高いビジネスであるとし、今後再開されるビジネスの中でも、最も慎重になるものと予想される。ロサンジェルスでは小売業から限定的にビジネスが再開されており、他州では既にレストランも人数制限を行いながら開店している(感染者数は減少していないが、日本人とは、これらに関しても考えが異なる)。

ここからが日本とアメリカの新型コロナウイルス対応、社会的現象が違う。
ロサンジェルスで休業要請を受けていたレストランが再開した時の問題点。一番難しいのは、一時帰休させているウェイターやウェイトレスをどこまで戻すか、または戻せるかという問題なのだ。中小企業の多くは今回の連邦政府の景気刺激策として、Payroll Protection Program(PPP)による支援の融資を受けている。但し、その資金使途の多くは従業員の給与支払い充当(日本でいう雇用調整助成金)、そして25%は家賃及びその他支払いに充当するよう決められている。しかし多くのビジネスオーナーは、この政府融資を従業員の給与には充てていない。というのは、従業員は失業手当を受けたほうが、働く給与よりも多くもらえるからである(日本とは額が違う)。これは、通常の州から受け取る失業保険の他に連邦政府からも週600ドル(ひと月2500ドル=27万円)が上乗せされているからである。そうなるとウェイトレスが月60万円、寝ていても振り込まれる。

通常もらう給与より多くの失業保険を受け取れるのであれば、働かないほうがマシということに当然なる。ここで、レストランオーナーにとっては、サーバーが戻ってくるのか、戻せるのか難しい判断となる。実際、マクドナルド等のファーストフードでは通常の勤務時間に戻しても、従業員が戻らないことが多く、これには様々な理由があるが、多くは働いているよりも多くの失業保険をもらっていることに起因している。腹が立つ経営者も多く、このような従業員に対しては州へ報告を行い、失業保険支払いの停止を求める動きも活発化している。

先に述べたPPPによる融資だが、給与支払いや賃貸料支払いに、まず充当し、その後返済出来なかった場合、借入金を免除するとアメリカ連邦政府は定めている。その場合、免除された借入金は、債務免除益として益金に算入しなくてもよい。その代り、たとえ給与支払いに充てたとしても損金扱いは出来ないと財務長官は言っている。当たり前だが、二重の税金控除になるからだとしている。

また、アメリカ国民への給付金1200ドル(所得制限付きであるが)だが、これは2020年の Tax Creditの前払いのようなもので(来年の確定申告の前払い税金)、前倒しで、2020年中に還付が行われるという発想に近いと考えられている。これは2018年及び2019年の税務申告に基づいて銀行振込もしくは小切手による給付となっている。IRSは給付以前に亡くなった者、海外に引っ越した者、不法移民、刑務所にいる者が小切手を受け取った場合は速やかに返金するよう、その手続方法を発表した。過去にIRSは、受け取るべきでない人が小切手を受け取り換金したケースで訴訟を起こしている。そのケースは6000ドル(70万円)未満の少額だったが、今回も恐らく訴訟されるケースが出て来るのは間違いない。その場合の返済は利息付きとなる。アメリカは公金にはうるさい。

今回のコロナ感染によるトランプの大型景気刺激策だが、その副作用がさまざまな所で出てくる気配である。大統領選挙の年とも重なり、トランプも必死の経済回復に努めているが、連邦政府は膨大な財政赤字を抱え、またカリフォルニア州も大幅な財政赤字で破綻寸前であるというが、日本は全て赤字国債発行。しかし、働かない方が収入は多いなど、ここにきて金持ちアメリカ、貧乏日本、新型コロナウイルスの対策で改めてわかった経済格差。

☆ 推薦図書 ☆
岩村充著 『国家・企業・通貨』 新潮社 1,400円+税
「グローバルリズムの不都合な未来」がサブタイトルである。かつて、国家は企業の支配者だった。だが、グローバリズムの時代に入り、力関係は覆る。企業が活動する国を自由に選べるようになると、国家は優良企業の誘致のため、法人税率等を引き下げる競争を始めざるを得なくなった。法人税率は2000年あたりでは、日米で40%、ドイツで50%ぐらいであった。ところが今や、引き下げ競争の結果、世界的に20%台が常識となったのである。
1980年になって、英のサッチャー首相、アメリカのドナルド・レーガン大統領時代には、今度は所得税の最高税率の引き下げ競争と相成り、国家も富裕層に選ばれるように努力した。
ところで、法人税率20%もけっして低くないが、さらに抜け道があり、GAFAなどはアイルランドやオランダの制度を使うことで法人税負担を2%程度にとどめている。
フェイスブックなどは「国家」の支配力より「企業」と考えてきている。例えば仮想通貨「リブラ」の計画を打ち出した。これには日本やアメリカの政府は反対した。反対する確固たる理由はあいまいだが、数年先か数十年先かわからないが、通貨としての価値への信認は必ず得られるとみている。この本はグローバリズムとデジタル化の進展がもたらす未来の「国家・企業・通貨」について考察している。

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