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アメリカ人の海外金融口座開示義務について判決

アメリカの市民権者、居住者、永住権者(グリーンカードホルダー)はアメリカ国外の金融口座につき、合計額が1万ドルを超えた場合には、全ての口座をUS財務省宛開示する義務がある。この報告書をForeign Bank Account Report (FBAR)と呼ぶが、これを提出していない場合、かなり重いペナルティがかかる。Forbesでは 最近大きな控訴審判決があった2件につき伝えている、興味深い記事だ。 FBARのペナルティでは故意ではなければ1万ドル、故意の場合には10万ドルか、最高残高の50%、どちらか大きい額と決められている。
1件目の裁判だが、United States vs Jane Boydである。Boyd氏は海外5口座の開示をしていなかった為、1口座1万ドル計5万ドルのペナルティが課せられたわけだが、被告は口座数ではないとして控訴をしていたようだ。控訴審では被告は期限内の申告ではなかったものの正しい数字を申告しており、故意に口座を隠蔽したものではないと判断した。またペナルティは口座数ではなく申告当たり1回のペナルティのみであるととして1万ドルのペナルティ判決を言い渡した。
もう1件はKimble vs United Statesである。このケースではKimble氏が明らかに父親の遺志を引き継ぎスイス口座の隠蔽を企み、スイス銀行にもアメリカ当局に被告の銀行情報を渡さないよう指示を出しており、故意に海外口座の隠蔽を図ったと見做された。結果、故意に隠蔽したということで、Kimble氏の場合残高が140万ドル(1億5千万円)あった為、70万ドル(7.5千万円)ほどのペナルティをかけられた。これを不服として控訴していたわけだが、控訴審も70万ドルのペルティを支持した。この中で裁判長は、申告書には海外の口座の有無を問う項目があり、これに無しと記入する、もしくは間違ったFBARを申告するような場合、納税者は偽証罪の罪に問われるとの判決を出している。申告書に一旦署名すれば、それは申告書を十分に見なかった、単にFBARを提出損ねたという理由は通らず、故意に行ったと見做されるに十分であり、法律の定めで罰を受けると言い放った。
Kimble氏での判決では、申告書に署名することにより、FBARの提出が遅れた、提出されていない、もしくはFBARの数字に間違いある場合には、どのような理由でも故意と見做され弁解の余地はないという厳しい判決となっている。
また、Boyd氏のケースでは、判決に反対した裁判官は、脱税者を増やすことになると懸念する意見を出している。専門家はFBARは単なる海外口座の報告を行うものであり、通常の申告書と違い報告を怠った、もしくは間違いの報告をしたからと言って課税関係が発生するものではないと反論している。私も同感である。この両判決は最終的なものではなく最高裁へ控訴をする可能性もあり、今後まだどうなるかわからない。アメリカ人が国外口座を持つ際は本当に気をつけなければならない。普段は本当にいい加減なアメリカ政府ではあるが、さすがに肝心な所は押さえている。日本人は海外に100万人を超える口座を所有しているとOECDなどが言っているが、5000万円以上の預金があると申告したものが、わずか1万人、これこそ是正しなければならないのは日本政府のほうであろうか?

☆ 推薦図書。  
中藤玲著 「安いニッポン 価格が示す停滞」日経BP 850円+税
日本のディズニーランドの入園料は実は世界で最安値水準、港区の年平均所得1200万円はアメリカ・サンフランシスコでは「低所得層」に当たる。いつしか物価も給与も「安い国」となりつつある日本。30年間の停滞から脱却する糸口はどこにあるのか。掲載と同時にSNSで爆発的な話題を呼んだ日本経済新聞記事をベースに、担当記者が取材を重ね書き下ろした書である。私はアメリカに現地法人を持っているので,よく日米を行き来するから、よくわかるが、一番驚くのがランチの値段だ。私がランチをするのが自分のオフィスのある、大阪(船場・淀屋橋)東京(日本橋・三越前)とロサンジェルスだ、すべてビジネス街だが、大阪は800円、東京は900円でリーズナブルなランチが味わえるが、ロサンジェルスは20ドルである、つまりチップを入れると2500円から3000円がサラリーマンの昼食の値段だ。大阪でも東京でも、それでも高いと、コンビニ弁当の300円400円に列をなす。
昔1990年頃までは、東南アジアが安いと、日本人が団体で買い物ツアーをした。また日本の商社マンなどは現地で家を借りると、ポケットマネーでメイドを雇えたのである。今はどうだろう、中国、台湾、香港などの団体ツアーが(コロナで途切れているが)大挙して日本に来る。それは観光ではなく、日本の製品が安いから。日本のサービスが安いからだ。日本が30年間成長しないから、他国に追い抜かれてしまった。貧しい国になったのである。OECDのデータによると、1997年の実質賃金を100とすると、日本では、2019年は90.6と減少が続く、同様にアメリカが118、イギリスは129など先進国といわれる国で給料が下がり続けているのは日本だけである。やがて近い将来、日本人は東南アジアに出稼ぎをしなければならなくなる。とデータ数字が言っている。

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