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ゴールドマンサックス、富裕層ビジネスの実態

ウオ-ルストリートジャーナルによると、投資銀行の流行りのビジネスは富裕層に対する絵画やワインを担保にした貸付だと報じている。例えば、ゴールドマンサックスは、株式、債券、コモディティを保有するのは勿論の事、最近では、なんと217 フィート (約66メートル)の大型ヨットまで保有するようになった。なぜなら、テキサスの大金持ちであり石油王であるWilliam Kallopに対する貸付が焦げ付き、US Marshalの手を借りてフロリダのWest Palm Beachで、このヨットを差し押さえたと報道された。

 

ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、UBSではこのような富裕層に対する貸付は増加しており、ゴールドマン及びモルガンスタンレーでは2012年以降その貸付残高は4倍まで膨れ上がり、現在それぞれ、290億ドル(3兆3000億円)、740億ドル(8兆1000億円)まで増加している。勿論富裕層に対する貸付は住宅ローンや株式を担保にしたものもあるが、最近ではクラシックカー、ヘッジファンドの持分、あるいは超高価なバイオリンを担保にしたものもあるという。

 

実際モルガンスタンレーとドイツ銀行はヘッジファンドビリオネアーSteven A. Cohenに対し、彼の所有する高価絵画のAndy Warhol及び Pablo Picasso の作品を担保に貸付を行っており、また、UBSは Blackstone Groupの創始者Steve Schwarzmanを含むトップエギゼクティブに対し、彼らの所有するPrivate Equity Firmのファンドの持分を担保に貸付を行っている。更にゴールドマンは天然ガス試掘者のAubrey McClendonに対して、彼の持つワインコレクションを担保に貸付を行っている。ゴールドマンのバンカーは、この担保はワインだけに特別に流動性が高いとジョ-クを飛ばしたいうことである。実際、McClendon氏が2015年の死亡した後、このワインコレクション(希少性の高いボルドーのワインが多かった。)はオークションにかけられ、なんと840万ドル(9億2000万円)で売却されゴールドマンは貸付金を回収したと報道された。

 

前述した大型ヨットNatitaの所有者のKallopは、1970年代に家族経営のMcAllister Towing & Transportationという海洋関係のビジネスを営んでいた。1993年に家族間の問題が発生し、その為、会社が分裂し、家族はタグボートやフェリー等の海洋ビジネスを引継ぎ、KallopはOffshore oilビジネスを引継いだ。Kallopはその後20年にわたり採掘権および採掘事業ならびに建設部門を拡大し、2009年にコロンビアと韓国の投資家に、その事業を10億ドル(1100億円)で売却した。そして、この資金を元手に彼は様々な投資に手を出している。エネルギー関連会社Quicksilver Resources宛7%投資を行い、ペルーに300年存在する蒸留酒製造所を購入している。

 

更に、Gulfstream はプライベートジェットを3機、また不動産ではペルーに大豪邸を1軒、ドミニカ共和国に2軒、テキサスに牧場と、少なくとも住居は8箇所ほどある。更に、ヨットだが、過去8年で少なくとも7隻購入しる。2010年に購入し、義母の名を付けたNatitaの他に、ドミニカ共和国に係留してある”Bad Girl”、 John F. Kennedyが所有していた93フィート (約28メートル)の“Honey Fitz”(JFKの祖父のニックネーム)、更に Trump大統領の元妻  Ivana Trump が所有していた“La Diva”も購入している。

 

Kallopがゴールドマンの顧客になったのは2014年だ。その年に彼は2100万ドル(23億円)を借りて12000SF (1115平方メートル、350坪)のタヒチ風の大豪邸をフロリダパームビーチのTrump大統領のプライベートクラブ Mar-a-Lagoの直ぐ近くに購入している。更に、Natita およびBad Girlを担保として Libor + 3%の金利で3200万ドル(35億円)を借りている。ゴールドマンから借金をしまくっていたKallopだが、2015年頃から資金繰りが悪くなり、Natitaのクルーを解雇、ヨットを6700万ドル〈83億円〉で売りに出すも買手が現れず、2016年には5750万ドル(63億円)に下げたが、いまだ買い手が現れず。また、パームビーチの大豪邸も昨年1100万ドル(13億円)で売却されている。また解雇された乗組員にも9万ドル(1000万円)、ボディガードには50万ドル(5500万円)ほどの給与の未払いがあり、裁判所により支払い命令が出されているという。

 

Kallopはフロリダマリーナに対してNatitaの停泊料数十万ドルの未払いがある、一方ゴールドマンサックスは発電機を錆びさせないように67000ドル(740万円)の燃料を購入し動かしている。現在この船舶は3990万ドル(44億円)で売りに出されているが、いまだに買い手が見つからず。因みに借入残高は2800万ドル(30億円)ある。富裕層ビジネスも利益は高そうだが、リスクも高い。誰でも成功したビジネスは永遠に続くとは限らない。小林一三の名言に「ある事業で大成功した経営者は、次の事業では成功するとは限らない」。
一度贅沢が身につくと本人のみならず家族全員、贅沢が身についてしまう。金持だったが故の人生不幸の結末がアメリカでは数えきれないぐらいある。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
五木寛之著 『孤独のすすめ』 中公新書ラクレ 740円+税
人生は、青春、朱夏、白秋、玄冬と四つの季節が巡って行くのが自然の摂理である。玄冬なのに青春のような生き方をしろといっても、それは無理だ。後ろを振り返り、ひとり静かに孤独を楽しみ、思い出を咀嚼したほうがいい。回想は誰にも迷惑をかけず、お金もかからない。孤独を楽しむ人生は決して捨てたものではない。それどころか、尽きせぬ喜びを発見する時間でもある。孫たちに囲まれて「おじいちゃん」「おばあちゃん」と大事にされる古典的な老後を夢見る人もいる。しかし現実にはそうもいかない。著者は人と群れるのが苦手で、年をとるにつれ、人間は孤独だからこそ豊かに生きられると実感する気持ちが強くなってきたという。例えば、本。読書とは、著者と一対一で対話するような行為である。体が衰えて外出できなくなっても、誰にも邪魔されず、古今東西あらゆる人と対話ができる。本は際限なく存在するので、孤独な生活の中で、これほど心強い友はない。読書は誰にも邪魔されない。ひとりだけの広大な王国だ。孤独であればあるほど、むしろこの王国は領土を広げ、豊かで自由な風景を見せてくれる。毎日、帰宅すると、まずテレビのスイッチを入れる方々には、わからない幸福感でもある。

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