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マイケル・ジャクソンの遺産額とIRSとの抗争

今から8年前の2009年にマイケル・ジャクソンが亡くなったが、彼の遺産額をめぐって現在も税務当局(IRS)と遺族との争いが続いている。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この件でIRSとマイケル・ジャクソン側で裁判になっている。アメリカは日本と異なり、税法が複雑(日本の方がもっと複雑)なので一般の裁判所ではなく、税金訴訟のみ扱う裁判所(US Tax Court)があり、そこで争っている。財産評価の点で大きな争点は、マイケル・ジャクソンの課税時期(死亡時)の命名権や肖像権(Name and Likeness Rights)の評価である。日本の税法では明確な規定がないため、これらについては課税対象とはならない。しかしIRSはこれらの評価に対し5億ドル(550億円)の追徴課税と2億ドル(220億円)の罰金を課すとしている。

 

マイケル・ジャクソン側の弁護士は、命名権や肖像権は子供への性的虐待疑惑や奇怪な行動から死亡時の価値はほとんどなく、当初申告は僅か2105ドル(20万円)だとしている。弁護士によると、マイケル・ジャクソンは2001年にレコードを出したのが最後で、2003年には子供への性的虐待の疑義で裁判になり後で無罪になったが、その後ホテルで自分の子供をホテルの窓から落そうとしたり、奇怪な行動が目立つようになり彼のイメージはかなり落ちた。2009年の夏から始まろうとしていたロンドンでの“THIS IS IT”コンサートツアーでさえも、50のショーのチケットは完売していたもののスポンサーを見つけることは出来なかった。

 

一方IRSは、マイケル・ジャクソンの命名権及び肖像権は1億6100万ドル(180億円)だと主張している。これは、2013年まで4億3400万ドル(470億円)と主張していた頃からは減額されている。マイケル・ジャクソンの弁護士は、エルビスもマリリン・モンローもモハメッド・アリも1億6100万ドルのような大きな金額で命名権や肖像権が評価されたことはなく、一生かかっても1億6100万ドルなどありえないと叫んでいる。

 

マイケル・ジャクソンの遺産を管理及び運営しているのはエンタテイメント専門の弁護士John Branca氏で、80年代からマイケル・ジャクソンの代理人を務めてきた。もう一人はベテランミュージックエグゼクティブのJohn McClain氏である。2009年にマイケル・ジャクソンが死亡して以来、この二人によってマイケル・ジャクソンの遺産はネットで10億ドル(1000億円)を生み出した。これは“THIS IS IT”の映画化やDVD化による収益、ラスベガスでのショーなどの収益もあるが、最も大きいのは、世界最大の音楽出版社であるSony/ATV Music PublishingのSony Corpへの売却である。これにより7億5000万ドル(800億円)の収入となり、マイケル・ジャクソンが死亡時にあった借金5億ドルはあっというまに吹っ飛んだ。

 

この件は2013年にUS Tax Courtに持ち込まれた後、弁護士は命名権及び肖像権の評価を2105ドル(20万円)としていたが、あまりにも低いと思ったのか、その後3億ドル(300億円)に修正している。そして、マイケル・ジャクソンの遺産額が膨らんだのはSonyへの売却益などを考慮したのであって、これは死亡時のマイケル・ジャクソンの遺産としては考慮すべきでないと主張している。

 

以上からも、日本の相続税評価額の方法とは全く違っている。日本は相続税法22条で遺産の評価は「時価」だと書いているが、実は国税庁が定める「財産評価基本通達」によらなければならない。土地は路線価、家屋は固定資産税評価額である、それ以外の「時価」は認めない。どちらも役所が決めたものである。同じ道路に面していれば、皆、同じ価額、このような評価方法は日本以外にない。「財産評価基本通達」に定める規定で評価しなければならない。

 

したがって「財産評価基本通達」に定めていないものは評価ができない。マイケル・ジャクソンも日本の相続税法の適用国で死んだなら、命名権も肖像権も価値はゼロである。日本では遺産はその後いくら価値を生み出しても、反対に死亡時に多額の価値があって、後にゼロになっても、あくまでも死亡時(課税時期)の瞬間の、国が決めた尺度での評価による。日本もそろそろ諸外国並みの評価方法を取り入れる時期に来ている。

 

 

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