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雇用者か事業者か? アメリカ・カリフォルニア州での争い

昨年9月にAB-5なる法案がカリフォルニア州の議会で可決され、2020年より今迄、独立業務請負人(Independent Contractor)事業者が従業員(雇用)扱いにされるということは以前のブログで書いた。このようなギグワーカーを抱えるUberやLyftは、とてもじゃないが、このような法律は遵守できないとしてきたが、今週裁判所は従業員扱いするよう改めて判決を出した。この法律はギグワーカーだけではなく通訳、スパの施術師等多岐に渡り、改めてカリフォルニア州のアンチビジネスの姿勢が問われることになった。

Forbes誌によればUberやLyftはテクノロジーのプラットフォームを与えているだけで、タクシー的なサービスを行っているのではないとして断固AB-5に反対し、この法律には従わないとしてきた。UberやLyftは大金をかけ、この11月に行われる住民投票にて、弁護士や医者のようにAB-5から免除されるよう大々的なキャンペーンを行っている。ただ、今回の判決により、カリフォルニア州でのUber及びLyftは11月の住民投票結果が出るまで営業を中止することも考えているとメディアは伝えている。

ギグワーカーを従業員としないことにより、連邦税や州税に源泉徴収、ヘルスケアー、年金、労災、失業保険等多大なコストと手間暇を省ける一方、カリフォルニア州は本来会社が払うべきコストをギグワーカーや納税者に転嫁するのをストップしたい意図がありありである。

独立業務請負人かどうかは、IRS、労働省、州の労働法、労災その他で定められているが、あまりに多くの法律があり、細部まで雇用主がついていけてないのが実情だ。その中でもIRSの基準は詳細で20のテストがある。会社が働き方に関しどこまでコントロールしているか、フルタイムかパートタイムか、プロとしての証書はあるか、道具や備品等提供されているか、経費の払い戻しがあるか等多岐にわたる。また、プロジェクトに対してお金を払うのか、受付のように時間で払うのか等実質的な面から判断される。因みにオバマケアーでは週30時間以上、もしくは月130時間以上の労働者をフルタイムと定義していた。

実際、独立業務請負人契約を締結しているかどうかは重要ではないようである。たとえ締結されていたとしても、後に独立業務請負人が、自分は従業員であるという訴訟をすることも出来るし、事故を起こし第三者を傷つけたとしても、第三者は会社に対して訴訟をすることも出来る。結局誰が従業員であるかということは、多くの場合裁判所の中で決定されてきているのだし、ただ、実際このような裁判では時間もかかり、カリフォルニア州はAB-5により裁判の時間の短縮もしくは訴訟を少なく出来ればとも考えているようである。

11月に住民投票で拒否されれば、UberもLyftもただの白タク会社になりかねないとして、カリフォルニア州からの撤退を考えているようだ。カリフォルニア州は全米での労働法のリーダーであり、カリフォルニアで決まったことは全米にも広がる恐れがあり、UberとLyftは存在意義をかけて免除に注力しており、アメリカでは、大統領選に次いで注目されているといっても過言ではない。

☆ 推薦図書 ☆
古小路勝利著 『会社の後継者育成をめぐる7つの大罪』 清文社 2200円+税
古い知人からこの本が届いた。彼は昔から論客であったが、私にこう言ったのを今も覚えている。十何年か前、「奥村先生は○○製の時計が好きなのですね。ホテルマンというのは、客の腕時計をいつも見ているのです」。その時、彼はホテルマンではなかったが、いろんな職業、いろんな人を見てきているのだという印象を持った。その彼がこの本を書いたが、今までの経験がものを言ったのだろう。全国の中小企業の経営者381万人のうち6割、245万社の経営者が70歳を超え、その半分は後継者がいない。そこで働く650万人の雇用が失われるかもしれない。後継者がいないというのは、いわば社会に対しての罪である。大罪かもしれない。そこで後継者育成に勘違いしている経営者に伝授しようとしているのが、著者がいう7つの大罪である。①「自分のようになれる従業員はいない」という過ち、②「打てる手はすべて打った」という過ち、➂「あなたの言葉が正しく伝わっている」という過ち、④「後継者は親族であるべし」という過ち、➄「まだ、任せることは出来ない」という過ち、➅「顧問弁護士、税理士だけに相談すればよい」という過ち、➆「まずは、資産の引き継ぎが重要である」という過ち。
そのうえで、以上の7つの大罪を乗り越えるには、どうしたらよいのか、を述べている。

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