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アメリカ市民権離脱に関する問題

アメリカ人及びグリーンカードホルダーは、アメリカ国外にある金融資産を全てIRSに申告しなければならなくなった。それを嫌って、アメリカ国籍を離脱するものが出てきた。他の国の国籍を取得すれば、簡単に今の国籍を捨てられるのか。日本人が日本国籍を離脱するのは割と簡単である。これはどこの国もそうであろう。特に日本は二重国籍を認めていないためだろう。ところがアメリカは、そうもいかないらしい。

ある米国税法関係のサイトで米国市民権離脱知識に関するクイズが記載されていた。私も返答に窮したのである。
Q1.米国同様に市民権者が居住地に拘わらず全世界の所得に対し課税する国は何カ国あるでしょうか?
Q2.米国市民権離脱申請手数料はいくらでしょうか?
Q3. 米国市民権離脱にあたり税法遵守を過去何年間してきた必要があるでしょうか?
Q4.一度市民権を離脱した場合、再度取得出来るでしょうか?
Q5.市民権離脱後も個人が直近年で何日、過去3年で平均何日米国に滞在している場合、米国居住者と見做され市民権者同様全世界の所得を申告することになるでしょうか?
Q6.一度米国市民権を離脱すると二度と米国で申告する必要はなくなるでしょうか?
Q7.2019年に市民権を離脱した人数は?
Q8.市民権離脱に際し3つの要件の内1つでも満たせばExit Taxが発生します。その1つがTotal Net Worth(純資産)ですが、どれだけになるでしょうか?
Q9.2番目の要件はTax Liabilityです。離脱前過去5年間に平均税金支払額はいくらでしょうか?
Q10.3番目はTax Complianceであすが、過去何年間税制を遵守していたことを示す必要があるでしょうか?

A1.このように祖国を離れて暮らす人にかける税金をDiaspora Taxと言いますが、国連加盟国193国の中で、このような税制を施行しているのは東アフリカの小国、大統領独裁、アフリカの北朝鮮と言われているエリトリア、1カ国のみです。
A2.$2,350。因みに、シンガポールは$25、英国は$470となっております。
A3.5年。
A4.Almost Never、国務省によれば市民権の放棄という行為はIrrevocable(取消し不能)であるとしています。例外として、18歳未満での放棄を上げていますが、その他の例としてはエリザベステイラーがいます。彼女は元々米国籍の両親のもと英国生まれですので、二重国籍だったわけですが、1965年に一度米国市民権を放棄しています。その後、米国上院議員との再婚に際し市民権を取り戻すことが出来ています。
A5.直近の年に31日以上滞在し、その前年の滞在数の1/3、その前々年の滞在数の1/6を合計したものが183日以上になると米国居住者と見做され、全世界の所得を米国で申告する必要が出てきます。
A6.賃貸不動産等米国を源泉とする収入がある場合には、非居住者として申告を行う必要が出てきます。
A7.2071人。2008年には3983人、2016年5411人、2017年5132人、2018年4050人。これは2010年にForeign Account Tax Compliance Act(FATCA)が発効され、海外居住の米国市民権者の締め付けが厳しくなり、米国市民権離脱が加速しましたが、2017年以降減少傾向にあります。海外米国市民の市民権離脱が一巡したことが原因かもしれません。
A8.2百万ドル。夫婦で別々に計算されるため、もし夫が2百万ドルを超えているが夫婦合算で4百万ドル未満の場合には、配偶者間で資産の移動を行うことも可能です。
A9.$168,000。独身も既婚者も同じ金額であるため、もし離脱を考えているのであれば、夫婦別々での申告も考えてよいかもしれません。
A10.5年。過去5年間で無申告もしくは何らかの間違いがある場合には、Exit Taxがかかります。但し、離脱申請中に修正申告を同時に行うことも可能です。

以上だが、回答していて、アメリカ人の中で10問のうち半分以上正解するものは50%にも満たないだろうと思った。読者はいかがであったろうか。

☆ 推薦図書 ☆
髙田礼人著 『ウイルスは悪ものか』 亜紀書房 1,850円+税
今や全世界の悩みである新型コロナウイルス、人類の脅威となるウイルス、ウイルスとは何か。この本は今から1年半前に発売されたので、今のウイルス問題以前である。ウイルスはインフルエンザの流行が毎年決まって発生するが、ウイルスについてきちんと理解している人は少ない。
ウイルスは単独で増えることは出来ない。この意味では「無生物」である。だが、生きている細胞に侵入すると、その細胞を利用し「生きて」いるように「自己複製」を行う。ウイルスが細胞に侵入し、増殖している状態を「感染」という。ウイルスが細胞に侵入するには、生物の細胞表面にある「レセプター(受容体)」に結合する必要がある。どのレセプターに結合するかはウイルスによって異なる。そのためウイルスは特定の生物しか感染出来ない。ところが、1997年に鳥インフルエンザはヒトに感染し命を奪った。当時の常識を覆す出来事であった。しかし人間の活動領域が広がり、人間に感染し、高い病原性を示すものが出現しだした。ウイルスにすれば、自身の遺伝子を増やして残しているに過ぎないのだ。著者は、ウイルスの生存環境に踏み込んでいった私たち人間が考えていかなければならない問題だと。

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