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アメリカ大統領候補トランプの税制改革(2)

トランプは連邦所得税の最高税率を現行の39.6%から25%に下げると言っている。しかし税収減少による穴埋めをどうするのか。彼の案では「税額控除」を削減したりループホールを塞いだりすることで可能だとしている。

 

なお驚くのは、法人税収入についてだが、アメリカに資金を還流すると課税されるので、オフショアに積み立てているアメリカ企業の資金が2兆1000億ドル(250兆円)あるので、一度限りで一律10%の課税を行うとしている。ただし納税猶予期間を3年とっている。この課税強化により、オフショアにある資金がアメリカ国内に還流するのを促進し、国内の投資や雇用が潤うのを期待している。さらに、アメリカ企業の国外収益に対しても課税を行うとしているが、彼のプランは3年目までにRevenue Neutralともうたっている。この意味は、歳入を上げることも低くすることも、さらには債務を多くすることもしないということであるが、4年目以降は歳入が増加するとしている。

 

個人の所得税は現在の7段階から、0%、10%、20%、25%の4段階に下げ、10%には所得が夫婦合算で5万ドル(600万円)超10万ドル(1200万円)以下が該当し、最高の25%には夫婦合算所得が30万ドル(3600万円)超の所得層がこれに該当する。ちなみに日本では夫婦合算の所得税は存在しないが、1人1800万円だとすると、所得税・住民税合わせて50%となる。ちょうど2倍である。

 

キャピタルゲイン(譲渡益課税)に関しては現在のトップレートの23.8%を20%に下げると言っている。これはオバマケアのサーチャージ3.8%を取り除く考えであろう。トランプは常に、オバマケアの全てをなくすと公言しているので当然であろう。また彼はAlternative Minimum Taxをなくし、ヘッジファンドのパートナーの優遇税制として問題となっているCarried Interest Capital Gain扱いではなく、通常の所得として税率を計算すると言っている。これは、トランプはウォールストリートで働く者が税制的に優遇を受けているがために、すぐに超富裕になることが気に食わないとアメリカメディアが解説している。

 

法人税については最高税率を15%とするとしていて、リバタリアンのRand Paulが一律14.5%としているのを除けば、一番低く、Marco Pubioが25%、Bushが20%であり、現行の法人税最高税率が35%であることを考えても低い税率となる。これによりトランプはアメリカ企業の競争力が戻ると主張しているが、企業の新規設備投資減税に関しては全額経費化させないと主張している。

 

トランプは他の大統領候補者に対しても無茶苦茶な批判をしたり、共和党のパーティクラッシャーだと言われたりしながら、よくここまで人気を保ってきたなと思う。政治家としてはまったく未知数だが、このまま人気を持続できれば、この一大エンターテイナーの政治ショーが現実になるかもしれない。

 

 

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現行の相続税法では建物の評価は固定資産税評価額で行う。鉄筋コンクリート造の建物なら1㎡当り全国同じ評価額になる。田舎の分譲マンションなら販売価額は安いが、都心ではその何倍にもなる。そのため相続税評価額と時価との乖離が大きくなるので、できるだけ高いマンションを買えば相続税対策になり、人に貸せばなお30%評価減になる。タワーマンションが最もよい。評価額がマックスになり、しかも時価が下がりにくい。希少性がある。しかも場所は東京。理由は人口が増え続け、海外投資家も注目していて、東京オリンピックがダメ押しするということである。

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