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租税回避に走る世界の巨大企業

私は今、アメリカのロサンゼルスのオフィスにいる。したがって2日間ほど日本のテレビや新聞は見ていないので、日本で報じているのかわからないが、今中国の習近平主席がワシントンを国賓として公式訪問している。今朝ホテルでABCニュースを見ていて驚いたのは、両国首脳の会談を伝えたのはほんの数秒、つまり無視である。新聞も見たがアメリカのメディアは習近平をまったく歯牙にもかけない扱いで、報道でこの主席と国に対する全米国民の不信感がよく見て取れる。ニュースはローマ法王がアメリカに来ているということばかりで、その他、フォルクスワーゲンの不正問題などが話題である。

 

その話題の中で気になったのが、OECDの税務に対する新たなルール。スターバックスやアップルをはじめ、巨大企業は親会社や子会社を低税率国に置き、そこに利益を集中させて節税する。人、物、金が国境をまたいで簡単に移動できる時代になった。ところが国は各々独立して税収を得なければならない。特にネットで商売するグーグルやアマゾンの取引は目に見えない。今の時代、親会社や子会社をどこにでも簡単に作れる。したがって低税率国に親会社が集中する。従って企業誘致のため先進国も法人税率の引き下げ競争が激化しているのが現実。

 

今や法人税率が30%以上の国は日本とアメリカぐらいか。アメリカは自給自足できる国で、資金に困ったらドルを印刷すれば事足りる面があるが、日本はそうもいかない。そんな中でOECDは、巨大企業は子会社を含め各国にある関係会社の会計データ等を税務当局に提出しないといけない新しいルールを作った。こうすると関係会社間取引が明確になり、移転価格税制や租税回避行為がわかるというもの。

 

つい最近アップルやアマゾンの租税回避行為が明らかになった時点でも、これらの会社はペナルティを払ったのだろうか。OECDのルールをひたすら守るのは日本の財務省や日本企業であるが、20か国からなるOECDに徴税権はない。国連決議みたいなものだから、守らなかったとしても法的制裁はない。無視する国や企業にはかなわないのである。北朝鮮やイランの核開発もしかり、遠くからやめてくれと言うだけである。中国の南沙諸島の埋め立てもそうである。米中首脳会議でも習近平は中止するとは言わないだろう。つまり国際社会では、やった者勝ちである。OECDのルールでも移転価格の問題で日本企業が指摘を受けても、日本政府はその企業の擁護にまわったことがない。順法精神も良いが、これではしたたかな欧米には勝てないのではないか。

 

アメリカに滞在するたびに思うのは、なんと日本は公正、公平を大事にする国だろうか、建前上、外国はそれを正義のように謳うが、実は外国の法律の根本は自国民を守るためにある。自国民を守らない法律は日本ぐらいだろう。お人よし国家か、それとも国際感覚が欠如しているのか。

 

☆ 推薦図書 ☆
徐向東著 『「爆買い」中国人に売る方法』 日本経済新聞出版社 1,500円+税
2014年に訪日した中国人観光客は241万人、その日本での消費額は5600億円で、一人当たり約23万円である。中国人がメイド・イン・ジャパンを買いたがるのは「安全・安心」だから。世界一厳しい消費者がいる日本国内販売商品を信頼している。中国で販売されている日本商品は信用されているわけではない。中国現地生産の日本や欧米ブランドの材料は中国で調達されているからだ。どんな商品を買っているかというと、化粧水、美容液、乳液といったスキンケア商品が一番多い。「安全・安心」だからである。日本製のスマホやパソコン、テレビ、洗濯機はあまり買う人はいない。ただ炊飯器が爆買いの対象となっている。これは、日本製の炊飯器は内釜の素材が優れているので、炊き上がったご飯がおいしいのだ。中国人は情報通で日本人以上に日本商品を知っている。このような中国人に爆買いさせるには、中国はスキャン文化なので、店頭ポスターや商品パッケージなどにQRコードを導入するのが早道だそうだ。

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