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海外資産に課税強化、なぜここまでやるか

☆ 今週の推薦図書 ☆

野口悠紀雄著 『日本式モノづくりの敗戦』 東洋経済新報社 1,890円
パナソニック、シャープをはじめ、日本のメーカー各社が赤字に陥るなか、アップルは高収益を上げている。その要因は、部品メーカーを固定化せず、条件の変化に応じ常に最適な相手と取引する「水平分業方式」でコストを下げている。日本の製造業は製造現場を持っている。つまり工場を持っているのである。アップルに見るように「ファブレス化」、つまり工場を持たない製造業を実現しなければならない。付加価値の増大のみにまい進する。生産、組立を外注し、自らは開発、販売のみに特化しなければ日本の製造業の未来はないとしている。
氏の久々のヒット作品である。

 

2000年に相続税法が改正された時、OECD諸国をはじめ先進国は驚きを隠せなかった。
税法は本来、納税義務があるのは、その国の居住者なのである。その応益負担の原則というのがあって、生活している限りは、その国の道路や学校やいろんな恩恵にあずかっているので、当然その財源である税金を負担するのがあたり前であるからである。

ところが、日本国外にある財産を、日本国外に居住する者であっても日本国籍を持っていれば、贈与や相続で取得した場合は日本に税金を払えとなったのである。つまり日本国籍を所有していれば、たとえ日本に住んでいなくても、日本の内外にある財産を贈与や相続で取得すれば、日本に贈与税や相続税の納税義務があるとしたのである。

例えばアメリカなどでは、アメリカ市民であっても、国外の不動産についてはアメリカの課税権が及ばないとしている。日本は、日本国籍を持っていれば、世界中にある財産について納税義務が生じるとしたのである。考えれば、よく他国は文句を言わなかったと思える。日本の資産課税が突出したように高いため、最近ではそのために日本国籍を捨てるものが相次いだ。悲しい話ではある。

しかし、平成25年自民党税制改正大綱では、それにさらにアミを張った。つまり、日本国籍を持っていなくても(つまり外国人)日本人から日本国外にある財産を贈与や相続で取得した者は、すべて日本に納税義務があるとしたのである。狂気の沙汰である。諸外国はどのような思いで日本の改正税法を見ているのであろうか。これにより、外国との相続税に関して二重課税になるのは必至であり、ここまで日本の富裕層を追い詰める必要があるのだろうか。甚だ考えさせられる平成25年度税制である。

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