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教育資金贈与の改正と税負担

日本は教育費についての非課税措置は欧米に比べて極端に少ない。安倍内閣で教育資金の贈与について1500万円まで贈与税が非課税となる措置が施された。毎年100兆円もの個人金融資産が積みあがる国である。従って年々相続財産が増加するのである。高年齢層が持つ金融資産を子や孫に移転するにはもってこいの税制として、当時、華々しく登場した。贈与税の仕組みが日本では複雑で、アメリカのようにTransfer Taxとして1本ではなく、暦年課税贈与(110万円の基礎控除)と相続時精算課税(2500万円の特別控除)があり、さらに暦年課税贈与も、直系尊属からの贈与は「特別税率」が適用され、それ以外からの贈与だと「一般税率」が適用される。「特別税率」の方が「一般税率」より低くお得である。
令和5年度の税制改正では、この租税特別措置法70条の2の2の「父母・祖父母等の直系尊属が30歳未満の子・孫へ教育資金を信託等により贈与した場合の1500万円までの非課税措置」について、受贈者である子・孫が30歳に達した場合、1500万円の贈与を教育資金に使いきっていない場合、残額に対して贈与税が課される。この時、課される贈与税は低い「特別税率」ではなく「一般税率」となる。さらに教育資金贈与を子・孫が使い切っていない状態で贈与者である父母・祖父母が亡くなると、その時点で子・孫に相続税がかかり、孫などが法定相続人でない場合相続税の2割加算が行われる。ただし子や孫が23歳未満の学生などであるときは、2割加算を免れるが、令和5年度の税制改正で、相続財産が5億円以上であるときは、例えその孫が学生であっても相続税の2割加算が行われることになった。学生である孫に所得があろうはずもないが、親が払えと言うのであろう。年々厳しきなる相続税と富裕層課税、日本脱出組が増えるのは間違いなかろう。

☆ 推薦図書。
林真理子著 「成熟スイッチ」 講談社現代新書 840円+税
著者はご存じ日本大学理事長である。何冊か、彼女の本を今まで読んだが、少し品性に欠けるところがあるので、ここ数年は読んだことがなかった。しかし東京駅の本屋でこの新書版を手にして読むと、さすが著者は日大の理事長という雰囲気にさせてくれる。地位は作家までも変えるのかと。彼女は若いころから、渡辺淳一や瀬戸内寂聴に育てられ、いつの間にか60歳を過ぎて成熟するようになった。この本は4つの成熟を書いている①人間関係の心得②世間を渡る作法➂面白がって生きる④人生を俯瞰する。で構成されている。その中で、こんなことを彼女が書くかと思ったのが、「会食におけるワインというのは、人の賢さや謙虚さ、セコさや卑しさまでを露呈させてしまう、恐ろしい魔物です」と、これには私は感嘆した。その他、お金を味方につける、仕事をどう面白がるか。読書の快楽などなど・・、彼女も大学理事長になった今、今までのような、酒池肉林のような本は書けまい。しかしためになる本である。

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