ブログ

クレディスイス問題とアメリカのタックスヘイブン

三菱UFJモルガンスタンレー証券がクレディスイスの永久劣後債(AT1債)を日本の富裕層投資家を中心に約950億円分を販売しており、この価値がゼロになったというニュースが衝撃的に流れている、しかし冷静に考えれば、そもそもクレディスイスはドラッグマネー資金洗浄、海外汚職行為法違反、違法な為替操作、モザンビークやロシアのオルガルヒへの違法なローン等、不祥事が世界で最も多い銀行であるのは有名だ。このような問題銀行の債券をなぜ三菱が販売していたか、私には理解出来ない。クレディスイスは、この3月にスイス国立銀行の主導でUBSに買収されたが、2014年には、アメリカ政府によりアメリカ人の資産隠蔽及び脱税幇助の罪で、26億ドル(2700億円)の罰金を課された。これには猶予を与えられており、実際にはその半分の13億ドルしか支払っていない。そして今年に入り、更に資産隠蔽がばれて、この13億ドルの未払い分を、アメリカ政府は買収先のUBS宛請求する公算が高まっている。
もともとスイスの銀行秘密法はなぜできたのかというと、1500年から1600年にかけてフランスにおいてカトリックとプロテスタントによる宗教的対決があり、敗北を恐れたプロテスタントがフランスの富が没収されることを懸念して、政治的に中立であるスイスに富を移動させたのが始まりである。1930年代にスペインのフランコ将軍は自国民が富をスイスに逃避させているのではないかと目を光らせるようになったので、スイス政府は、銀行が顧客情報を外部に開示することを犯罪とすることを明文化したのである。
しかし、これは他国にとっては不都合であり、よって租税条約を締結することにより、ある程度の開示を求めることが出来るようになった。但し、これでは不完全で、人物や口座を特定する必要があり、脱税防止にはあまり効果がなかったのである。アメリカ政府はForeign Account Tax Compliance Act(FATCA)を制定し、各国とIntergovernmental Agreement(IGA)を締結し、アメリカ市民のオフショアでの監視を強化した。ところが、これらの法律はアメリカにある金融資産は他国に開示せず、銀行情報がアメリカ政府へ流れる一方通行であるので、他国は不満で、OECDはCommon Reporting Standard (CRS)を100以上の国と締結し、2018年にはスイスも締結し、銀行秘密は既にないと宣言した。ところがである、この後アメリカ政府はクレディスイスにあるアメリカ人資産7億ドル以上の隠蔽を見つけることになる。FATCA でもCRSでも捉えることの出来ない口座があったのである。驚くべきことは、これらの顧客の殆どが2重国籍であり、アメリカの納税者番号(ソーシャルセキュリティーナンバー)を使用せず、もう一方の国の納税者番号を使用し資金を移動させていたのである。
今後の課題はShell Entity においてBeneficial Ownership がどうなっているのかということであろう。法人を設立し、その法人の株主がパートナーシップで、ジェネラルパートナーがLLCで、そのメンバーがエスクローだったりと、実際誰が所有しているのかわからない。アメリカ国内デラウエア州でLLCを設立し、このLLCがオフショアの銀行口座を開設したら、誰が本当にこのオフショア口座の所有者か今もわからない。なぜなら、デラウエア州では法人の株主を開示する必要がないからである。これはワイオミング州も同じである。
ヨーロッパではタックスヘイブンリストを作成しているが、毎回デラウエア州をリストに載せるか議論される。アメリカが一番のタックスヘイブンではないかともEUにいわれることもあり、アメリカがバハマ、バミューダ、ケイマン、シンガポール、ベトナム等に厳しく調査するのは偽善であるとも言われている、実はアメリカが一番の租税回避地ではないかと。

☆ 推薦図書。
生田哲著 「『健康神話』を科学的に検証する」 草思社 1980円
今の世の中、健康情報が、ネット、テレビ、新聞など日々あふれている。しかし実際はほとんどウソである。例えば日本では、風邪をひくとクリニックに行く、そこで抗生物質を処方され、患者がそれを飲む、それで風邪が治った。は全くの嘘である。風邪の原因はウイルスの感染である。細菌の感染ではない。抗生物質は細菌の増殖を抑えるものでありウイルスには全く効果がない。
またサプリを摂取する人は多い。だがサプリは病気の症状を改善しないことが厚労省に報告されている。例えば、膝などの間接の痛みが改善すると謳っているグルコサミンやコンドロイチン、これらを毎日多く飲んでも、関節の痛みは無くなることはない。関節は骨と骨が直接接触しないように軟骨が覆っている。軟骨を取り囲むのがヒアルロン酸とコンドロイチンである。そこでヒアルロン酸の原料あるグルコサミンを補給すれば痛みが改善されると、一見理にかなっているが、そもそもヒアルロン酸はブドウ糖から体内で合成されている。しかも我々は1日300gものブドウ糖を摂取している。ヒアルロン酸の合成のために、せいぜい1日1gほどのグルコサミンをサプリで摂取する必要など全くない。
その他、「牛乳は骨を丈夫にし、骨粗鬆症を防止する」など全くのでたらめであるなど、ためになる本である

関連記事

  1. 同性婚を合法とするアメリカ最高裁の判決
  2. 大富豪アマゾンのJeff Bezosの資産と給料
  3. アメリカ、転売チケットの課税事情
  4. 消費税回避の達人、アマゾンのしたたかさ
  5. トランプは実業で成功したのか
  6. アメリカ議会の高齢化が問題
  7. 日本の税制改正、徹底的に富裕層タタキ
  8. 日本人の海外預金口座数、何と219万件、国税庁発表

アーカイブ

PAGE TOP