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富裕層いじめの仏、高税率は憲法違反

以前からブログで富裕層に対しての課税強化を行っているのは、先進国ではフランスと日本だけであると書いてきた。スイスやイタリアなどでは相続税なるものまでなくして富裕層を外国から招き入れている。富裕層を自国に抱き込めば、国内投資が増える、雇用も拡大するという思惑もある。

ご存知のように、前のフランス大統領選でサルコジを破ったオランドの公約は富裕層への課税、年収100万ユーロ(約1.1億円)を超える高所得者に最高税率75%へ引上げるというもの。これには大統領選でサルコジ危うしという世論調査が出した段階で、フランスを脱出する富裕層が相次いだ。ベルギーの首都やスイス・ジュネーブはそのため、高級住宅地の地価が跳ね上がり、またロンドンなどは市長がわざわざ逃げて来るフランス人に「ようこそ、ここは住みやすいところです」と誘致合戦までして問題となったが、新大統領は公約でもあるので2013年1月から実施しようとした。

75%にはいろいろな問題があった。政治では素人大統領なので、税制の実務を知らなかった。例えば夫婦とも100万ユーロ近い所得があっても超えていなければ75%の適用はなく、夫だけが100万ユーロを超えて妻が専業主婦の場合、世帯としての年収が低いのに税負担が高くなるなどの不備が目立った。いきなり政権を取ると現実との離反が目立つ、日本でも野党の時は、米軍基地を沖縄だけに負担させてはならない、県外移転だとか、高速道路無償化、子ども手当など、野党時代はいろいろと約束するが、いざ政権を担うと現実問題できないことであったどこかの党のマニュフェストと同じである。

しかし野党は特定階級の者だけが高負担を受けるのは憲法違反ではないのかと訴えた。そこでそれを審査する憲法会議が審議し、間近に迫った増税案に審判を下した。最高所得税率の75%への引上げは違憲と判断し、政府の方針を却下した。政府は憲法会議の指摘を受け検討したが、再度、所得税率引き上げ法案を提出する模様だ。しかし、稼いだ金の4分の3を国にもってゆかれるような国に、経済界に企業のリーダーやオーナーは住めまい。フランスの今を見ればよくわかる。ユーロ圏で危ないのは、次にフランスかもしれない。

ところで日本の所得税や相続税の最高税率は、消費税の増税にあわせて引き上げられることは三党合意で明らかである。日本も特定の者だけ取られる相続税や所得税は、課税の公平をうたう憲法に違反していると訴える議員や法曹界はいないのか、国会議員の一票の格差ばかり裁判沙汰になるが、税金の格差は放置されたままである。

 

☆ 推薦図書 ☆

永濵利廣著 『男性不況』 東洋経済新報社 1,575円
最近、日本で男性の職場が減少し、職場の見つからない男性が街中に溢れている。リーマンショック以来顕著だ。1997年から2011年の間に313万人も就業者が減ったが、なんとその91%が男性である。
交際相手のいない未婚男性がどんどん増えているが、一番の理由は給料の低さである。年収300万円未満の既婚率は極めて低い。
女性の給与も減少しているが、減少幅は男性より低い。なぜなら男性正規雇用者の賃金が減少しているのに対して、女性の正規雇用者の賃金が上昇しているためである。
この頃、実に子煩悩なパパが多いのにはビックリする。これは労働時間が減って家にも早く帰れる上、小遣いが少なくなり、飲みにも行けず、子と接する機会が増えたのは確かだ。その背景には、妻に仕事を続けてもらい収入を確保するという狙いが明らかにある。

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