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密告者事情、アメリカの脱税摘発

 

昨年2013年度は密告者に対する報奨金の総額は53百万ドル(53億円)であったとするIRSの発表があった。IRSによると、この密告のおかげで367百万ドル(367億円)の税収増があったというから、IRSも十分もとを取っているわけである。しかし、前々年は密告報酬が125百ドル(125億円)であったことに比べると減少している。2012年はスイスのUBSの口座の暴露をしたBradley Birkenfeld一人に対して104百万ドル(104億円)支払っているので比較にならない。もっともBradleyは多額の報奨金をもらったが、大物クライアントのIgor氏の情報を隠匿したとして40か月の刑事罰をくらって、現在服役している。IRSはBradleyに対して104億円の報奨金を出したが、彼の情報に基づいてUBSに780百ドル(780億円)の罰金を課したので、これも十分もとを取っている。

 

 

この脱税密告報奨金の制度とはどういうものか。実は二通りあって、一つは70年ほど前からの規定で、課税金額が2百万ドル(2億円)以下の場合には実際の脱税の回収額の15%を報奨金としてもらえるもの。もう一つは2006年以降始まった新報奨制度で、2百万ドル(2億円)を超える場合には回収額の30%を報奨金としてもらえる。IRSによると2百万ドル(2億円)超の規定については、2006年発足以来9件の報奨金の支払いをしているが、現在1,320人の密告者が調査待ちの状態で、その脱税対象は12,192人の個人または法人となっている。これらの件を実際にIRSが裁き、決着するまでは5~7年かかるといわれていて、その間にさらに密告が増加する傾向にあるという。

 

 

おもしろいのは、報奨金を支払う際にIRSは一律28%の源泉徴収をするという。日本も内部告発者が多くなってきている。役人の人件費圧縮のためにも、この報奨金制度をとり入れれば税収難の昨今、消費税率の1%ぐらいは稼げるのではないだろうか。ちなみに以下の表は2007年以降のアメリカ報奨金制度の推移である。

 

 

Tips for the Tipsters

The IRS pays cash awards to people who turn in tax cheats.

 

 

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

Number of awards

227

198

110

97

97

128

122

Total awards paid*

$13.6

22.4

5.9

18.7

8.0

125.4

53.1

Additional sums collected*

$181.8

156.0

206.0

464.7

48.0

592.5

367.0

Tax collections above $2million

12

8

5

9

4

12

6

 *In millions of dollars

 Source: Internal Revenue Service

 


☆ 推薦図書 ☆


石田淳著 『できる課長がやっている52の行動』 毎日新聞出版 1,500円+税


中間管理職の悩みのトップは「部下がなかなか育たない」である。大きな間違いは、部下がきちんと働ける職場さえつくれば、部下は育つものだということである。そして部下の功労には金銭的報酬以外のもので報いる「トータル・リワード(総合的な報酬)」を用いることだとする。それは、

1. 承認(あなたがいてくれて嬉しい)

2. 均衡(部下の生活を考える)

3. 文化(仕事以外のアイデアや立場を認める)

4. 成長(成長させてあげる)

5. 環境(職場での居心地を良くする)

6. 骨組み(ムダな仕事をさせない)

という具合に非金銭的報酬を与えることによって人は育つという。

 

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