ブログ

アメリカの脱税密告制度(1)

アメリカでは脱税した者を密告し、それが事実なら報奨金がもらえる制度があるのをご存知だろうか。

アメリカでは2006年に脱税情報の収集を図ることから、Whistleblower programを法制化し、IRS(米国歳入庁)は脱税により実際徴収することのできた税額の30%を密告者に報奨金として与えるという制度を作った。

以前、このブログで書いたが、スイス政府とアメリカ政府のもめ事まで発展した事件、UBSに口座があるアメリカ人の脱税情報を開始せよと迫って、遂にUBS側も譲歩せざるを得ない事態に陥り、それがもとで、スイスの銀行の秘密性が崩れたこの事件は、当時UBSのプライベートバンカーだったBradley Birkenfeldという男が、IRSに脱税をしているアメリカ人情報を密告したことがこの事件の発端であった。

その結果、Bradleyは先日、IRSから1億9百万ドル(約90億円)の報奨金を受け取った。密告するだけで90億円もの大金を手にするわけだから凄いと思うが、アメリカではこのニュースは関係者に衝撃を与えたと言われている。と言うのは、この金額は予想されていたよりもはるかに少なかったということだ。

そもそも、IRSはこのプログラムに前向きではなく、議会や裁判所でどうしてこのプログラムを利用して情報収集を行わないのか、また情報収集したとしても報奨金を支払うのに何故これほど時間がかかるのかと問われ、IRSは窮地に立たされていた最中、今回の支払いが行なわれた。ただ、この情報提供者にとって、このプログラムでクレームをする前に気をつけなければいけないことが何点かある。このBradleyはそれを知らなかったばかりに、彼はこの大金受取りを刑務所の中で知らされたのだ。(次回に続く)

 

☆ 推薦図書 ☆

ジョセフ・E・スティグリッツ著 楡井浩一、峯村利哉共訳
『世界の99%を貧困にする経済』 徳間書店 1,995円
アメリカでは上位1%の人々が富を独占し、残りの99%の人々の生活は苦しくなる一方である。第2次世界大戦後の30年間、アメリカではすべての所得層で所得が上昇し、しかも上層より下層の人々の方が成長が速かった。しかし、この30年間は上層の所得が増える一方、下層の所得が減少し、格差が拡大している。
原因の一つに、アメリカの不平等のほとんどが、市場経済の歪みに端を発している。つまり上層部の人々に政治的に過剰な力を与えて(これは政治家と富める者との合体)、法整備など、自分たちに都合よく作り上げ富を独占した。
つまり金持ちになるには二つの方法があり、一つは富を創出する方法、次には他人の富を奪う方法である。
現在はアメリカの上層部の人々が持つ財産の多くは新たな富の創出ではなく、既存の富の移動によって形成されている。これが問題なのである。と

関連記事

  1. アレサ・フランクリン相続税対策をせずに死ぬ
  2. アメリカの大学不正入試事件と脱税
  3. FBARに関するアメリカ最高裁判決と現実。
  4. 「ふるさと納税」のバカらしさ
  5. アメリカ、仮想通貨に対する課税をさらに強化
  6. ユニマット 100億円の申告漏れ
  7. 最もビジネスに適した州はどこか、アメリカ
  8. 22億円の申告漏れ、ノーベル賞受賞者・本庶博士

アーカイブ

PAGE TOP