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ロンドン市長の税金問題 ~続編~

日本ではいよいよ確定申告の季節である。最近は「ふるさと納税」なるものを総務省あたりが宣伝している。ふるさとに税金を寄附しなさいということである。アメリカでは含み益のある株式を寄附しなさいということをキャンペーンしているところがある。例えば証券会社には”Donor-advised charitable-giving funds”というファンドがあるが、そこに一旦寄附して、それを寄附者は自分の好きな慈善団体へ毎年寄附することができる。当然、一度ファンドへ寄附するので、寄附金の税額控除ができて、節税にも使えるということである。

 

さて、前のブログの、アメリカ市民権を持っているロンドン市長にIRSが脱税告発している件。ウォールストリートジャーナル紙によると、市長の自宅の売却金額が判明し、1999年に47万ポンド(75万ドル)だったものが、売却時には1.2Mポンド(200万ドル)になっていた。概算でいうと5万ドルの税金をアメリカに納めよということ。更に延滞税や重加算税に加え、過去のIRSに対しての申告にも問題があるということで、納税額はかなりの額にのぼる。また、アメリカはFATCAがあり、アメリカ国外にある金融資産の申告を怠っていると、ペナルティは27.5%にのぼり、毎年の預金残高の申告をしないでいると、預金の50%を税金としてIRSに納めなくてはならない。

 

ロンドン市長はもちろんアメリカ市民権を放棄すれば片付く問題ではあるが、アメリカ市民権を手放す様子は全くないので、その場合には、市長は過去5年にわたりアメリカ税法に従って申告していましたという宣誓をしなければならない。もしウソの申告であれば、当然ペナルティは膨大なものになる。市長の言う、自分が住んでいるイギリスで納税義務を果しているのでアメリカで払う必要がないという論理は、アメリカでは通用しない。それは彼もわかっているはず。アメリカ市民権保有者はどこに住んでいようと、アメリカで申告せよという法律は、南北戦争まで遡り存在している。アメリカ国外に居住している約800万人のアメリカ人は市長と同様の問題を抱えている人は少なくない。より専門的な知識でガードする必要がある。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
ロバート・B・ライシュ著 雨宮寛/今井章子共訳 『格差と民主主義』 東洋経済新報社 1,600円+税
著者はクリントン政権で労働長官を務め、現在バークレー大の教授。この本は、なぜ少数の富裕層に富と権力が集中し、大半の国民の暮らしは貧乏になるのかを解明する。
1960年~70年は富裕上位1%の人々の所得総額はGDPの9%であったが、2007年には23.5%になった。富裕層上位、たったの400人だけで、下位層1億5000万人の所得を合計したよりも多い富を持っている。政治家が当選するためにはカネが要る。そのため政治家は富裕層が求める施策を実施する。
ブッシュ政権が行なった2001年の減税により、最高所得税率は35%が上限とされた。そしてキャピタルゲイン課税は15%に下げられた。最も富裕な400人が支払った所得税の税率は17%。中間層はその倍ぐらい納めている。大統領候補だったロムニーは2000万ドル(24億円)の収入に対して13%しか払っていない一方、労働者の賃金はフォードでいうと、2002年の時給は25ドルだったが今は14ドルである。日本は格差社会というが、この本を読むと、何と日本は平等な社会かと実感させられるに違いない。

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