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トランプ新税制とアメリカ国民のギャップ

私はドジャースタジアムで大谷のでっかいホームランを観て、日本へと急いだ。しかしアメリカは相変わらず景気が良い。
ところで、今、トランプ政権による関税措置が発動されているが、ペンシルベニア大学の調査では、これまでに1270億ドルもの関税収入となり、昨年の同時期と比較し720億ドルほど増加していると発表があった。但し、関税発動前は、トランプ政権は関税発動によって、年収20万ドル(3000万円)以下の人たちには所得税はかからなくなると主張していたが、実際には2022年度レベルで年収17万9000ドル(2600万円)未満の納税者が納めている税額は6000億ドルとなっており、到底現在の関税収入の増加により年収20万ドルの納税者が納税しなくてよい水準にはなっていない。第1期トランプ政権でトランプ氏はメキシコとの国境の壁の建設費用はメキシコ政府に払わせると言っていたが、結局はアメリカ国民の税金で賄われており、関税も実際はアメリカの輸入業者は払っているわけなので、見方によれば、結局はアメリカ国民が払っているだけの話になるとアメリカ世論が言っている。
またトランプ政権の新税制One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)だが、どこまでBig でBeautifulなのか、不法移民の取り締まりや国境警備の予算はBigなのはわかるが、よく見るとトランプ政権が言うようなBeautifulではない規定も含まれているようだとウオールストリートジャーナル(WSJ)は伝えている。これは、OBBBAにはいつもの通リ多くが時限立法及び所得制限があり、独身者に有利であるからだ。
身近な生活面から一見税制的に優遇されたと考えているアメリカ独特の習慣であるチップや時間外手当を非課税にするとか、住宅ローンのように自動車ローンの利息が税額控除出来るようになるなどトランプ政権は宣伝しているが、実際チップは独身者も夫婦合算申告者も25000ドル(366万円)までの収入と上限が定められており、独身者で、150,000ドル(2200万円)から400,000ドル(6000万円)、夫婦合算申告者で300,000(4500万円)から550,000ドル(7600万円)の年収で非課税額が減らされ、なくなってしまう。時間外手当では、その非課税額は時間外収入分の半分に対し控除され、独身者で12,500ドル(180万円)、夫婦合算申告者で25,000ドル(360万円)の上限があり、独身者で150,000ドルから275,000ドル、夫婦合算申告者で300,000から550,000ドルの所得制限がある。また、自動車ローンについては、利息額の控除の上限は10,000ドル(150万円)で、しかも、買った自動車の最終組み立て場所はアメリカでなくてはならないとある。また、所得制限もあり、独身者で100,000から150,000ドル(2200万円)、夫婦合算申告者で200,000から250,000ドル(3700万円)となる。
更に今回の法案をよく見るとギャンブルでの課税負担も大きくなるようである。今まではギャンブルで負けた損失額は勝った金額の100%まで控除出来るとされていたが、今回の改正で勝った金額の90%までとなった。例えば、ギャンブルで1百万ドル勝ち、1百万ドル負ければ今までは課税はされなかったのが、これからは、10万ドルに対して税金を払わなければならないということになる。これにはラスベガスのあるネバダ州の議員や多くのプロフェッショナルギャンブラーは異議を唱え、この部分の法案の修正案を提出する構えである。2022年のIRSのデータでは約230万人が申告書においてギャンブル関連の収入を申告しており、彼らの多くはギャンブルで負けた金額を控除している。下院で通過した際は100%控除出来るとなっていたが、上院を通過した際に90%に修正され、その後再度下院で議決された際、修正されなかった。様々政治的なやり取りがあったわけだが、OBBBAについては、気づかない所で、トランプ政権の宣伝通リの恩恵を受ける法案にはなっていないようである。日本の税制のように扶養控除だとかガソリン税だとか、実に単純な税法しか争点にならないが、アメリカ税制改正は本当に多岐にわたっている。これは国民の多くが年末調整で終わっている国と、国民全員が確定申告しなければいけない国との税法に向き合う姿勢と知識が違うからであろう。いずれにしても日本ではこの30年間、富裕層に対する減税はない。

★ 推薦図書。
森功構成 「日枝久 独占告白10時間」 文藝春秋 9月号 1800円
中居事件に端を発したフジテレビ問題、黒幕や天皇と騒がれた日枝元フジホールディング取締役相談役が半年以上の沈黙を破って、仲居事件後初のインタビュー記事である。さすがに森功だけあっての構成である。日枝氏は「独裁なんか絶対あり得ない」「フジの執行部は逃げる連中ばかり」などと語り、週刊文春であれだけたたかれ、同じ会社が発行する月刊の「文藝春秋」の雑誌に話をするのは社内でも随分抵抗があったが「文藝春秋」は僕が高校生の時からの愛読書であり週刊文春とは違うとしている。この記事はフジの港、遠藤、金光、清水など首脳陣がいかにサラリーマンであり、事が起こった場合うろうろするだけの役員だとよく理解でき、フジの体質を否定しているものではない。

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