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IRSによる2021年度、脱税犯罪トップ10公表

毎年、アメリカは悪質な脱税犯トップ10を公表している。裁判・判決から見ると、日本は脱税犯に甘い。この前の日本大学理事長脱税事件でも理事長は保釈され刑務所には入らない。
IRSには税及び金融犯罪に対して特殊部隊(Criminal Investigation Special Agents)があり、ここでは悪質な脱税、資金洗浄等の刑事事件を摘発する。Forbesに、この特殊部隊が選んだ2021年度税犯罪ベスト10が載ったが、ここではベスト5をご紹介する。
第5位、ビッドコイン交換所運営のブルガリア国籍の男が資金洗浄の罪で121カ月の実刑判決。eBay やCraigslist等のオークションサイトで実際には所有していない車等の高額アイテムを売却、受け取ったドルを暗号資産に変換し、更に海外通貨に変換し資金洗浄を行ったもの。
第4位、元牧師に14年の実刑、更に2266万ドル(24億円)の賠償金の判決。自分の教会関連の会社への投資をテレビ、セミナー等で持ち掛け、3300万ドル(35億円)を集め、あたかも投資しているかのように投資家宛ステートメントを偽造、投資金額全額をだまし取り、税金も払わず、自分は贅沢三昧の生活を送る。
第3位 カンザスシティで給与担保消費者金融会社を設立し、ローンをすると見せかけ、実際はそこで収集した顧客情報を他の金融会社に売却。更に、この会社を売却後も顧客情報を金融会社に売却したり、存在しないローン債権を他の金融会社に売却。自分では一切税金の申告は行わず、贅沢三昧な生活を送る。12.5年の実刑及び賠償金8百万ドル(10億円)。
第2位 カリフォルニア州の太陽光パネル会社のオーナーが、実際移動可能な太陽発電機をないにも拘わらず、次々と投資家を募り、Ponzi Schemeのような形で資金を集め、NASCARのチームを買ったり、贅沢品の購入につぎ込み、30年の実刑及び1億2000万ドル(140億円)の資産没収。
第1位 カリフォルニア州で一家で150件もの偽のコロナ救済金申請を行う。この救済金で豪邸及び金塊等購入、贅沢三昧の生活を送る。彼らは他人の個人情報、給与明細や税金書類を偽造したり盗む。家族で17.5年から10カ月の実刑判決を受ける。判決前両親は足にはめられたGPS装置を切り逃走、現在も逃走中。
これらのケースの殆どが通常の税務調査から始まる。アメリカでは税務署員が税務調査中に何かおかしい、犯罪の匂いがすると感じると直ぐに、この犯罪特殊部隊に連絡する。IRSは税務調査中に犯罪性があると納税者に告げる必要はない。税務調査は何も説明なしに、そこで一時中断するのである。日本でもそうなのだが、ここで、納税者は、税務調査は直ぐに終わって良かったと安心するわけである、それから、この特殊舞台は静かに証拠集めを始める。彼らの有罪判決率は90%以上だ。どこで疑義がかけられるかわからないので、通常証憑等の記録はアメリカでは6年取っておく必要があるが、過去の申告書の写しは死ぬまで保管する必要がある。これは納税者にとっては自分を守る手段である。、例えば家を改修したとすれば、改修の際のレシートを全て保管すべきだ。この特殊部隊は、最初はあなたは証人だから事情を教えて欲しいと持ち掛けるが、いつのまにか証人が容疑者になる場合も多いのである、アメリカでは、出来るだけ自ら話はせず、IRSが近づいてきたら、まず弁護士を立てないといけない。IRSの調査では、彼らはピストルを所持している場合往々にしてあるので、下手に抵抗すれば命まで取られる恐れがあるのだ。かつてはアルカポネも脱税容疑で打ち合いになっている。こう考えれば、日本の脱税者で財産没収のうえ懲役10年なんて判決が出たことがない。そうであるからこそ平気で資産隠しや、香港・シンガポールを活用した節税に猛進する者が後を絶たないのかもしれない。

☆ 推薦図書。
小林武彦著 「生物はなぜ死ぬのか」 講談社現代新書 900円+税
著者は生物学者で東京大学定量生命科学研究所教授。
地球には2つの物しかない。「生きているもの」とそれ以外。土や空気や水は生きているものではない。量的に言えば、地球上に生きている者は、ほんのわずかだ。生きているという事は、いずれ死ぬという事である。老化は死へ一歩近づいているサインであるが、ここで疑問に思うのは「なぜ、私たちは死ななければならないのでしょうか?」現在たくさんの生き物が存在することも、そして死ぬことも、すべて理由がある。その解は「進化が生き物を作った」という事実。むつかしいことを簡単に解説しているが、本の中で「ヒトの老化のスピードが遅くなったワケ」「なぜ、少なめの食事で長生きできるのか」「死は進化が作った仕組みである」などの章は実に興味深く読めた。

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