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枯渇するアメリカの年金

先日アメリカ政府はアメリカ年金システムであるSocial Securityの基金が2034年までに枯渇するとの発表をした。この背景には2008年頃からベビーブーマー世代がリタイアし始め、急速に年金支払いが増加した。アメリカでも少子化が進んでおり(日本ほどではないが)、労働人口の減少及び寿命が延びることで受給期間が増加し、約10年前から収支が逆転し基金の赤字幅が増大している。
ウオールストリートジャーナル(WSJ)によれば、それでは2034年に基金がゼロになり破綻するのかと言えば、そのようなことはない。Social Securityシステムは、アメリカ連邦政府の根幹であり、連邦政府が破綻しない限り、この基金が継続される。以前はこの基金、収入が支出を大幅に上回り、他の連邦政府のプログラムが、余ったこの基金のお金を借りていたのだ。このまま現在の支給を行うと2034年までに基金が枯渇するので、支給額を25%削減することが必要とも言われている。
ある統計によれば、アメリカの退職者の60%は年金が主な収入となっており、また55-66歳の約50%は老後の貯蓄を全くしていない。そのような人たちに対し、年金支給額の25%を削減するということがはたしで可能であろうか?年金が削減されれば、モノの購入を控えることになる。これは全体的な経済活動が停滞させることに繋がり、GDPの減少、失業率の増加、景気後退という悪いサイクルが生まれる。すでに日本は24か月連続実質賃金マイナス。故に13か月連続家計消費額マイナス。日本のGDPがマイナスで経済が疲弊している。
現在年金の支払いはアメリカのGDPの5%程度となっており、この割合は高まるばかりである。この年金問題は決して個別の問題ではなく、アメリカの財政赤字の問題とも関連する。財政赤字を賄う為に国債を発行する。発行すればするほど金利が上昇傾向になる、住宅ローン金利も上がる、議会は予算削減を余儀なくされる、年金財源確保のために防衛費や環境問題に対する予算が削減されるかもしれないという恐怖がある。(赤字国債慣れした日本では、この種の恐怖は感じない、不思議でもある)
解決策としては増税を行うとか、年金受給年齢を引き上げる等考えられるが、バイデン大統領は富裕層に対する増税を唱えている。年金支給額を削減しないという点では、バイデン大統領もトランプ氏も同様の考えである。前回議会で年金改革が行われたのは1983年である。この時に初めて年金の満額受給年齢が65歳から67歳に引き上げられた。今後年金基金が他の一般財政予算から赤字額を補填出来るようにする法律改正も解決策の一つではあるが、議会でもめるであろう。日本の議会では誰も年金に触りたくないから議論にもならない。アメリカ議会の誰もが年金は大きな問題だと考えているが、誰も何もしようとしない。2034年まで、あと10年あるわけだが、行動を起こすまで10年待つ余裕はない。この年金問題をどうアメリカが対応していくのか、日本政府は、アメリカのそのやり方を日本の年金問題を解決するうえで教科書にしたいようである。外交・防衛もそうだが、他国がどうするのかを、いつも注視し、比較し、物事を決定する日本政府、どうなるやら

☆ 推薦図書。
牧野知弘著 「なぜマンションは高騰しているのか」 祥伝社 990円
マンションが高騰している。都心部では1戸今や1億円2億円3億円が当たり前、4億円5億円も珍しいことではない。それでは誰が買っているのか、一つは富裕層、資産防衛もあるが、相続税対策もある。次に投資家、転売によって利益を得ようとしている。利回りは度外視。次に円安を活用した日本不動産に投資する外資系法人、そして同じ外人でも自国の政治・戦争などのリスクを回避して国外に資産を移す富裕層たちである。しかしマンション高騰の原因は需要層だけではない。建築価格の高騰がある。①建築資材の高騰②エネルギーコストの高騰③エアコン設備などに使われる半導体の世界的不足④円安による輸入資材の高騰➄労働力不足による人件費の高騰などである。
タワーマンションは長く住み続ける住宅ではない、住居より「金融商品」として考えた方がよい。したがって、適切なタイミングで「売り抜け」が肝心である。住居としての周辺環境を意識する必要がない。タワマンは住居ではなく商品だから。

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