OECD(経済協力開発機構)がこのほど発表した富裕層の税逃れの防止策として、国外に住む個人の金融口座の情報を多国間で交換するシステムを構築するとした。これによると2015年か2016年から各国の金融機関に国外居住者すべての口座情報を毎年1回、税務当局に報告させるというもの。
4年前にアメリカはFATCA(Foreign Accounts Tax Compliance Act)を成立させ、アメリカ人及びアメリカ永住権者が国外に持つ口座情報をIRSに対しての提供を義務づけた。この法は乱暴なもので外国の金融機関にアメリカの法律を履行する義務であり、さすがにアメリカ及び米ドルの威信を見せつけた。
OECDの新ルールは参加各国の税務当局の間で、外国に住む者の情報を交換し、資産隠しや所得逃れを防止するのが狙いである。日本の国税局がアメリカに送るのは、日本の金融機関に口座を持つアメリカ人やアメリカに居住する日本人の情報である。またアメリカの国税当局(IRS)は米国に口座を持ち、日本に居住するアメリカ人や日本人らの情報を日本の国税局に送る。OECDが言うには、外国居住者が持つ預金口座や証券口座の情報を毎年1回オンラインで提出することを義務づけ、外国居住者が持つすべての個人情報、つまり住所、口座残高、利子、配当などを報告し、丸裸にするという仕組みである。
はたして実効性があるのか。例えばアメリカ人が日本の銀行に口座を持とうとすると大変なのである。先ず日本の銀行は窓口で断る。日本では非居住者の預金は預からない。本当に限られた銀行、支店でしか扱わない。一方、アメリカの銀行は外国人のパスポートとIDだけあれば簡単に銀行口座は作れる。
日本人でアメリカ国籍を取得した人やアメリカ居住者(グリーンカード保有者)は、日本の非居住者であるので、本当は日本の銀行で口座を持てないが、皆、持っている。何故か。日本にいる時に既に銀行口座を開けているか、日本に住民票を置いているのである。日本国籍を捨てない限り、簡単に住民登録できる。したがってアメリカに住んでいる日本人は、日本の銀行では日本居住者扱いである。利子に対して20%源泉で終わりである。アメリカに10年間住んでいても新OECDルールでも、報告対象外の日本居住者なのである。
つまり彼らの日本にある預金はアメリカに通報する義務はない。新ルールは「日本の国税局がアメリカに送るのは、日本の金融機関に口座を持ち、アメリカに居住する日本人やアメリカ人の情報で、逆にアメリカのIRSはアメリカで口座を持ち、日本に居住するアメリカ人や日本人の情報を日本の国税局に送る」としているので、アメリカに住んでいる日本人はどっちにも引っかからない者が多くいる。
☆ 推薦図書 ☆
里岡美津奈著 『超一流おもてなしの心・技・体』 朝日新聞出版 720円+税
著者はANA在職25年の元チーフパーサー。特にVIP特別機搭乗を務め、皇室、各国元首の接遇で知名度も高い。「おもてなし」の心がわかっていれば時代の変化を恐れる必要がない。緊張感こそが「おもてなしの心」の核心、緊張感は心の張りである。天皇皇后両陛下や政府首脳を前にしても緊張することはなかった。
また「おもてなしの心」の種は家庭教育であり、居場所がある安心感が余裕の生活、ビジネスにつながる。夫婦関係を修復する「ありがとう」も男女のおもてなしであるとする。
人生の処世術を学ぶにも参考になる一冊である。